二組目・レオン&結苑
夏だ!花火だ!肝試しだ!(完結)

二組目・レオン&結苑


ライザーとベリーが無事ろうそくを立てている頃、二組目の二人が出発しようとしていた。




レオン
「――さあて、出発しマスか」


結苑
「は、はい」


アメリ
「大丈夫? 結苑」


結苑
「えっ!? な、なにが!?」


アメリ
「……久世の肝試しで、いつも泣いていたでしょう」


結苑
「大丈夫だよアメリちゃん。久世ちゃんも、ここならあの時みたいに凝った仕掛けもしないだろうし」


アメリ
「でも心配ですわ」


結苑
「ほんとに平気だって!(だって……レオン軍師が一緒だし……)」


アメリ
「なんなら私のペアと代わってもいいんですのよ?



「…………なんの解決にもなっていないぞアメリ」


レオン
(長い反抗期デスねえ……)


結苑
「あ、あの軍師」


レオン
「ハイハイ?」


結苑
「私……たぶん、少し……いえ、ちょっと叫んでしまうかもしれないんですけど……その」


レオン
「ふんふん」


結苑
「ちゃんとろうそく立てるまでは歩きます! ちゃんと歩きます!!」


レオン
「待ってクダサイそれは腰を抜かす可能性があるということデスか?」


結苑
「いえ! きっと札を使えば歩ける筈です!」


レオン
「どうやってデス?」


結苑
「足に札で」


レオン
「呪いをかけて操るとかそういうのはやめナサイね」


結苑
「…………!! じゃ、じゃあどうすれば……」


レオン
「…………やれやれ。別にそんな無茶なやり方しなくても大丈夫デスよ」


結苑
「……へ?(軍師……もしかして…………お姫様だっ)」







レオン
「怖いのに慣れればいいんデス」



結苑
「――――――………………」



レオン
「…………」


結苑
「…………」


レオン
「さっ、行きマショーか♪」


結苑
「イヤァァァァァァアアア!!!!??」






リリスティア
「…………レオン」



ヒル
「この上なく楽しそうな顔だったな」









**********






レオン
「――この地下通路を通るのも久しぶりデスねえ〜」


結苑
「…………」


レオン
「結苑ちゃん、知ってマス? どこの国でもそうデスけど、地下牢は大体備えられている設備のひとつデシて。あ、ほら。そこの暗い通路の先には多くの罪人が投獄された牢屋がありマス。黒ずんでいるのは血痕デスね


結苑
「っ…………」


レオン
「もしこの世界に、グルージス地方の伝えどおり浮かばれない霊魂がいるとすれば、恐らくおびただしい数の霊魂が此処にいることデショーねえ」


結苑
「あ、あの……軍師は……幽霊とかって信じているんですか……?」


レオン
「…………そうデスねえ。いるとするなら、とっても怖いことかもしれマセンね」


結苑
「……?」


レオン
「もしいるなら、俺は体中取り憑かれてる筈デスよ……」



――カタンッ




結苑
「!!???」



レオン
「おやおやすみマセン。足元の何かを蹴ってしまったみたいデス」


結苑
「な、何かって?」


レオン
「見マス? 照らしマショーか?」


結苑
「いいいいいいいです!!! 先を急ぎましょう!!」


レオン
「……そうデスか?」





* * *





――ゴトンッ



結苑
「ひっ!?」


レオン
「おやおや。こんな足元に古い壺。すみマセン、倒してしまったようデスね」


結苑
「そ、そうですか。壺……」


レオン
「暫く使ってないデスからねー。獣が入り放題で、荒れているんデショ」


結苑
「とっても暗いし……松明が無ければ歩くことが難しいですね」


レオン
「ハイ。でもかえってそれで良かったかもしれマセン」


結苑
「何故ですか?」


レオン
「見なくていいものもたくさんありマスしねえ」


結苑
「……………………」


レオン
「さ、進みマショー」








* * *





――ガシャアアアン!!



結苑
「〜〜〜〜〜っ!!!!!???」




レオン
「ああ〜、すみマセン。足元にあった皿を踏み潰してしまったみたいで(超笑顔)」


結苑
「どう踏み潰したらお皿が落下して壊れたみたいな音が出るんですか!!??」


レオン
「足元が暗くて怖かったんデスよ。大股で歩いていたら思い切り……」


結苑
「しかも軍師……これ相当大きなお皿ですよ……お怪我は無いですか?」


レオン
「ハイ。平気デス。しかし、さすがに俺もびっくりしマシた。まるで、天井にいる御庭番さんが昴さんの屋敷の床の間に飾っている大皿を思い切り落としたような派手な音……」


結苑
「えっ!? あ! 欠片に昴さんの鳳凰紋!!」


レオン
「怖い怖い」


結苑
(…………久世さんだ……)






* * *









「ココ……デタイ……ココ……デタイ…………ココ…………デタイ…………」




結苑
「軍師ぃー!!(泣)」


レオン
「ハイハイどーしマシた結苑ちゃん」


結苑
「こ、今度は何を蹴ったんですか!?」


レオン
「何を言ってるんデス?」


結苑
「声ですよ! も、もう本当にやめてください! 本当に怖いんですから!」


レオン
「俺は今黙っていマシたけど?」


結苑
「……へ……。でも今……」


レオン
「驚かし役の人の声デショ。詩帆さんあたりの」


結苑
「そ、そうですよね」


レオン
「ハイ。肝試しなんデスから。怖がらせる手はあれよこれよと使って来るデショ。君が死ぬほど怖かったという肝試しに比べたら、まだ軽いんじゃないデスか?」


結苑
「……そうですよね。私……少し大げさですよね……(恥ずかしい……本当に子供っぽいなあ私……)」


レオン
「アッハハ。まあ見ていて飽きないので俺は気になりマセンけど」


結苑
「そ、それはどういうことですか!?」


レオン
「いやいや、あんまり怖がるものデスから面白くって。ちなみにさっきの声、実は俺デス(笑)」


結苑
「やっぱり軍師なんじゃないですか!」


レオン
「そうデスよ」


結苑
「けど……後ろの方から聞こえた気がしたんですけど、一体どうやったんですか?」


レオン
「え? ああ。声を出すようにしたのは俺デスけど、声を出したのは性格には俺では無いんデスよ」


結苑
「……どういう意味ですか?」






レオン
「声を出したのは、テオマン君デスから(笑)」




*テオマン君*
黄泉白川を境に繰り広げられた北東と世闇の戦い勃発前に、レオンが敵の尋問に用いた拷問用ペット。
見た目は骸骨で色んな虫を体内に飼っている昆虫採集が趣味のお茶目さん。
大分気持ち悪いが、苦しむ人間を自分の中に取り込むのが好きな構ってちゃんだ!
元は古代国家の国王の遺骸を媒介に創造した精霊のようなものらしいが、今はなかなか振り向いてくれない(何をしても驚かない怖がらない)レオンにぞっこん。






結苑
「ひいいいいいいっ!!?」


レオン
「あ、結苑ちゃんあんまりテオマン君に過剰反応すると……」


テオマン
(テオマン は 喜んでいる!)


結苑
「いやああああああああああああああああ!!!!!」






**********








……お、大きい声出しちゃった……


恥ずかしい……


きっと軍師には、呆れられただろうなあ……


仕事ではドジばっかりで、まだまだ治療も研究も雑で……。


軍師やヒル様みたいに、陛下のお手伝いなんかなんにも出来なくて。


けど、今日はちょっとだけでも、軍師の横に並んで歩けて、嬉しかったなあ。



いつか、軍師の横に、胸を張って、立ってみたいなあ……









***********















レオン
「――ちゃん……、結苑ちゃん」



結苑
「…………ん……」


レオン
「結苑ちゃん。大丈夫デスか?」


結苑
「軍師……」


レオン
「おや、やっと気づきマシたか」


結苑
「軍師……、私…………」


レオン
「すみマセンねえ。ちょっと調子に乗ってしまったみたいデス」


結苑
「いえ、その、私の方こそ大きい声を……」


レオン
「もう最奥デスよ」


結苑
「!!??(わ、私……もしかして……今……軍師に…………)」


レオン
「どうかしマシたか?」


結苑
「……あ、あの」


レオン
「ああ。君がいきなり倒れたんで、申し訳ないんデスけどちょっと抱っこさせて貰いマシたよ。けど、変なことはしてマセンよ。おんぶでも良かったんデスが、こっちの方が歩きやすいんで」


結苑
「(ひええええええええダイエットしておけばよかったー!!)……あ、あの、すみません……私……ちゃんと歩くって言ったのにこんな……」


レオン
「――懐かしいデス」


結苑
「え?」


レオン
「昔、ライザー君やマイアちゃんを、こうやって運んだことが何回もありマシた」


結苑
「ライザーさんもですか?」


レオン
「ハイ。結苑ちゃんを見ていると、その時のことを思い出しマス。ほら、小さな子って、いきなり眠ったりするデショ? その都度、部屋まで運んでいたんデスよ」


結苑
「(やっぱり……軍師の目にはまだ私は……小さな子供と同じなんだ……)」


レオン
「――とはいえ、君みたいな女の子をこうやって抱いていると、若い頃のことも思い出しマス」


結苑
「えっ」


レオン
「アハハ。なーんて」


結苑
「あ、あの軍師、それって」



レオン
「ん? ああ、つまりデスね。俺みたいなオジサンでも、あんまり油断しちゃ駄目デスよ結苑ちゃん。君はちゃーんと、女の子なんデスから」




結苑
「…………軍師…………」


レオン
「さあ、蝋燭を立てマショ。うかうかしてると、昴サンたちが追いついてくるかもしれマセンよ」


結苑
「…………はい」




結苑
「(私……ちゃんと、女の子だって、思われてたんだ……)」




結苑
「(…………良かった)」




レオン
「(……どうやらもう怖がってないみたいデスね。まったく……、やりすぎデスよテオマン君。まあ、かなり面白い反応だったのは事実デスけど(笑) しばらくこんな素直な子は見ていなかったんで、とても楽しめマシたね♪)」





詩帆
「…………こ、腰が抜けましたわ…………」
↑テオマンが登場しようとした時、ちょうど同じ場所から出ようとしていた人























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