一組目・ライザー&ベリー
夏だ!花火だ!肝試しだ!(完結)

一組目・ライザーとベリー



久世
「いいですか。五分経ったら次の組が出発しますので、さくさく進んでください」


ライザー
「わかったよ」


ベリー
「はーい」


リリスティア
「気をつけてね」


ベリー
「行ってきま〜す!」




******




ライザー
「子供騙しなんだよな」


ベリー
「何が〜?」


ライザー
「肝試しだよ。不意打ち突かれたら、誰でもびくっとはなんだろ」


ベリー
「ん〜。そういう怖さとは違うんじゃない?」


ライザー
「あ?」


ベリー
「例えばね…………」






――あたしがまだサウザンスロードの頃の話。その頃住んでた山奥の小屋があったんだけど、山の中だからもちろん人はあたし以外にいないし、周りは暗い雑木林ばっかりで……静かな所。

昼間は太陽も見えて、明るい綺麗な場所なんだけど、夜になると変わる。
空はどういうわけか月が見えなくなるし、道は闇の底みたいに真っ暗……。
どこからか聞こえてくる、何かの焦るような鳴き声。
踏みしめる草の感触、それは本当に草なのか分からない。

月が無いのに揺らめく黒い影が、後から後からついてくる。
動いてないのに、動いているように見えてしまう。

急いで家に入ると、明かりをつけるまでに、また何かが動いて追いかけてくる。
でも、走って追いかけてくるんじゃないの。

ゆっくり、ゆっくり。
一歩一歩に、体重をかけているような、遅い歩みで。

あたしはドアに鍵をかけて、部屋の暖炉まで走る。
何故か、振り返って確認してしまう。
そしたら、やっぱりその黒い影はこっちに近づいてくるの。

ドアには鍵がかかってる。
入ってこれるわけないのに、あたしは焦ってランプを床に落としてしまう。
あの黒い影は、きっと入ってこれない。それなのに。



ライザー
「…………なんだよ、その影って」


ベリー
「……まだ続くよ」


その夜はそれで終わったの。
落としたランプを新しいのに買い換えるのは、まだ駆け出しだったあたしには辛かったけど。
でも、ちょっとお気に入りのランプを買って、あたしはまた夜を迎えた。
その日は早めに家に入ったから、妙な影におびえることなくランプに火を灯した。



ライザー
「…………」


けど、その時、急にランプの火が消えた。
誰かがランプに息を吹きかけたみたいに、すっと。
風じゃない。

息だ。
生暖かい。

それに、「ふう」っていう声が聞こえた。
絶対、聞こえた。



ライザー
「…………」



あ、背中に何か冷たいものが走る。

これは、まずい。

いる。

何かいる。



ライザー
「………………っ…………」



そしたら。


いたの。


顔だけ白くて、頭はまるで腐敗した植物のようにだらしなく伸びた髪に覆われた――男の、顔。

顔、だけが。

そう。







ベリー
「暖炉から無理やり進入を試みたお師匠の顔が!!!!」


ライザー
「エリムかよ!!!!!」



ベリー
「その日クリスマスだったんだよね〜。プレゼントに新しいローブ貰っちゃった!」


ライザー
「焦ったわ! 生首かなんかかと思ったじゃねえか!」


ベリー
「あたしそんなこと一言も言ってない〜」


ライザー
「でも思うだろうが今のは!」


ベリー
「そういうことだよ〜」


ライザー
「……ああん?」


ベリー
「本当は全くなんでもないことなのに、勝手に想像しちゃう。肝試しって、そういう疑心暗鬼的な怖さを試す遊びなんだよ」


ライザー
「……そういうことか」


ベリー
「納得?」


ライザー
「ああ」


ベリー
「だあって、精霊や竜、ましてアロゴみたいなおっきい獣がいるこの世界で、幽霊くらい怖くなんかないでしょ〜」


ライザー
「慣れてんなあお前……」


ベリー
「うん。こういうの、魔導学園でも流行ったことあったし――――――」


ライザー
「…………?」


ベリー
「……………………」


ライザー
「…………おい、どうした?」


ベリー
「ライザー…………」


ライザー
「あ?」


ベリー
「うし、う、うしっ」


ライザー
「…………何言ってんだお前」


ベリー
「後ろ…………後ろに……」


ライザー
「後ろ?」


ベリー
「後ろにげじょげじょの虫ィィイイイイイイ!!!!!!!」


ライザー
「は?」


ベリー
「やあああああ!!!! こっち飛ぶ! 飛ぶ! 絶対飛ぶそれ絶対飛ぶ!!! きゃあああああ!!!」




ライザー
「………………お前…………、もしかしてこれ見て叫んでんのか?」
※全長3cm程度の例の甲虫。



ベリー
「やっ、その虫だけは無理!! あたしそれだけは無理!! 潰して誓導術で!! 重力場で跡形も無く!!!
 

ライザー
「虫に誓導術ってどんだけ本気なんだよ! ……こんなのほっときゃどっか行」


ベリー
「こっち来たじゃないのよ馬鹿キンパツ〜!!」


ライザー
「お前がそいつの進路に逃げてんだよ! こっちだこっち!」


ベリー
「やああああん!!!」


ライザー
「! ちょ、おま……な、なに抱きついて……」


ベリー
「ほんっとあれだけは無理! 早く追っ払ってよ!!」


ライザー
「い、いやそんな思い切り抱きつかれたら何も」


ベリー
潰して!!

ライザー
「そ、その前に俺が……」


ベリー
「――“清浄なる水の流動よその御身大海より出づる刃となりて”」


ライザー
「唱えんな唱えんな!! 城が壊れる! そんっなに嫌いか!!」


ベリー
「……き、嫌いだって言ってるじゃん……」


ライザー
「アホ! そ、そんなしおらしい声出したってな……。つか、もういねえよ!」


ベリー
「……っ、い、行った?」


ライザー
「……お、おお」


ベリー
「…………」


ライザー
「…………」


ベリー
「ライザーの胸板気持ちいい……」


ライザー
「胸板ってなんだよ……。っ、おわ!? ちょ、何やって……」


ベリー
「くすぐったい?」


ライザー
「アホ! 当たり前だ!」


ベリー
「だってライザーなんかいい匂い〜。薔薇?」


ライザー
「ああ、ミリアがクローゼットにいっつも乾いた花っぽいの入れてるから、それだろ」


ベリー
「ポプリじゃないの?」


ライザー
「あー、そんなこと言ってたような気がすんな」


ベリー
「……いい匂い。あたしもこれ使おうかな」


ライザー
「別に入れる必要ねえだろ」


ベリー
「なんで? あたしの服、ポプリの香りしないよ?」


ライザー
「ほとんど俺の部屋で寝こけてるからお前にも移ってんだよ。匂い」


ベリー
「そーなの? 自分じゃ分かんない」


ライザー
「だから、いいんじゃねえの。別にわざわざポプリなんざ入れなくても」


ベリー
「……ねえ。ライザー」


ライザー
「ん?」


ベリー
「…………それって、やっぱ、そういう意味?」


ライザー
「……はあ?」


ベリー
「毎晩寝てれば、匂い移るんだよね?」


ライザー
「寝てれば……って、いつもお前が勝手に来るんだろ。俺はただ――」


ベリー
「毎日行ってれば匂い移る? そういうことだよね? ね?」


ライザー
「……っ!!」


弥一
「こ ん な の 絶 対 お か し い よ ! ! ! ! ! 」



ライザー
「なぁっ!!??」


ベリー
「きゃあっ!!」


弥一
「おかしいよ! 俺は君らが通るのをずっと待ってて朝から用意していたこの薄汚い布(元はウェラーさんの道着でもどうせ使うならアメリ姫の道着がよかった)を被って今か今かと驚かすタイミングを待っていたのに始まったのは爆発じゃすまされない小悪魔の誘惑世の中の金髪男子全員滅びろ!!!


ライザー
「な、なんだよ!」


弥一
「やかましいわ話しかけんなこの不健康王子が! なんなんだよその肝試しって! 何の肝を試すんだよどこに進むんだよ何に蝋燭立てるんだよ!! それに! そんな女の子の塊みたいな生き物と毎晩一緒に寝てるだと!? でも関係はただの軍部の同僚だと!!??
頭おかしいんじゃないのヴァイス王族絶対頭おかしいそして理不尽!!!


ベリー
「弥一君落ち着いて〜!」


弥一
否!!あんたは俺の同族と思っていたのに!

俺だってアメリ姫からそんなモーション受けたいわ畜生!! 

なんで俺には女がいないの!!??


御庭番A
「やっさああああああんん!!!!」


御庭番B
「やっさんまだいいよ! まだ望みあるもん! 俺らみたいに千歳緑の手によってかけ算されたりしてねーもん!まだいけるよ!」


弥一
「彼女欲しいうぉおおオオオオオォォォオオォォォオオオオ!!!!!!!!」





ベリー
「……どうする〜?」

ライザー
「まあ……蝋燭を立てに行くか……」



一組目・クリア


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