07

「んじゃ最低でもあと二人、ドラムとベース」
「そうか。それではその辺りのデータも揃えるとしよう」

柳にバンドを組まないかと誘われた後、私は割と即答といってもいいくらいすぐに返事をした。
Yes、と。
音楽が大好きな気持ちはきっと永遠に消えないだろうし、柳とバンドが組めるだなんて夢のようだ。
……それに、私はたぶん、まだ歌いたいんだと思う。
あのスポットライトが、あの歓声が、あの興奮が、忘れられない。

…まあ、その後屋上で他のメンバーをどうするかとか色んな事を柳と話合っていたという訳だ。

「んじゃ各自メンバー候補探して、また後日って事で」
「だな」
「じゃ、私もう帰るから」
「…サボりか」
「東京まで遊びに行ってくんの。じゃ!」

私は軽い話し合いを終え柳と別れて屋上を後にした。
そーいやちゃんと話したのは初めてのはずなのにそんな感じしなかったのはなんでだろ?





一度自宅に戻り私服に着替え、電車を乗り継ぎやっと東京に着いた。
今日は予約していたCDがアニメイトに届いたらしいので、その引き取りとグッズの物色だ。
やはり本店はいい。たくさんのグッズが置かれている。
だが、有名作品のグッズは多々あれど、やはり店内にテニプリのグッズがあるはずもなく、仕方ない事だと分かってはいても少しだけ落ち込んでしまった。

「はあ〜……」





買うものを買いアニメイトから出て、少しだけ東京の町をふらつく事にした。
神奈川もなかなかだが、やはり都心は人の数が半端じゃない。酔う。
どこか手頃な店で休憩をしようと少し細めの道に入った。すると、どこからか微かにドラムを叩く音が聞こえてきた。
歩くにつれてだんだんと大きくなるその音を頼りに歩を進めると、オシャレな喫茶店が目についた。どうやら音の発信源はここのようだ。

「こんちわー…」

表札のOPENの文字を確認し、扉を開けて中に入る。落ち着いた雰囲気のいい内装だ。だからこそ荒々しいドラムの音は不釣り合いで、しかしそのアンバランスさがどうにも気にいってしまった。
マスターらしき人に会釈をし、テーブルの席に座る。
ぐるりと店内を見回すと、外で聞いたドラムの音の発信源はすぐに見つかった。
店の端の、小さな小さなステージとも呼べない程の申し訳程度のスペース。そこに、彼はいた。
何かの曲を練習しているのだろう。彼の隣にはコンポがおかれ、スピーカーから曲がながれている。V系だろうか?(正直V系は詳しくない。)
ドラムを叩く彼の短い銀髪が、彼が頭をふるたびにキラキラと輝いていた。

………ん?短い銀髪?

…。
……。
………あっ。

そこで私は気づいてしまったのだ。ドラムを叩いていた彼の正体に。

「あ゙ぁ?何見てんだてめぇ」

……そう、私が聞き惚れていたドラムの演奏者は、亜久津仁だったのだ。






衝撃的すぎな

彼との出逢いは、私の魂を揺すぶるには十分すぎた。





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