06

時は流れ放課後。
屋上に来ていた私は、懐かしいものを手にしていた。
バンドを組んでいた時に使っていたギターだ。
なぜこれがここにあるのかというと、それはお兄さんのおかげだ。
お兄さんにメールしてなんでもいいからギターを持ってきてくれと頼んだら、これが屋上に届けられていたという訳だ。あの人は何でもできるのか?


「…懐かしいな、こいつ引くのも」

屋上に置かれた廃棄予定の机に腰をおろし、ギターを首にかける。
生前私がよく歌っていた曲『My song』はとあるアニメの挿入歌だ。歌詞も曲も大好きで完璧になるまで練習し、毎日毎日聞いて、歌って、ひいていた。
私はギターに少しばかり調節を施し、大きく息を吸い込み、ギターを引きながら歌い出した。
体全体に響きわたる懐かしい感覚。一度覚えたらもうやめられない。





……―――叫ぶように歌いながら、なんだか涙が出そうな気がしたけど、やっぱり出なかった。
涙は出なかった…けど、それでもなんか心に込み上げてくるもんがあると言うか、頭に浮かんでくると言うか。
……昔の仲間達の事、思い出しちゃうんだよなぁ…。

「……総長達、今頃なにしてんのかな……」

歌い終えた私は軽く息を整えて呟いた。
そしてギターをしまおうと座っていた机から下りた時、急に私以外の人間の声が聞こえた。

「なんだ、もうやめるのか?」
「…や、柳君…」

全く気配がしなかった。まさか人に見られていたとは思ってもいなかった。…しかも、あの柳蓮二に。

「見てたのか」
「ああ。なかなかよかったよ」
「ふーん、どうも」

つかつかとこちらに歩いてくる柳に若干警戒しながらギターをしまう。
じゃあもう戻るから、と切りだそうとした私の言葉は、近くまできた柳の言葉に重なり打ち消された。

「…じゃ「じゃあもう戻るから、とお前は言うが…どうだ、少し話したい事があるのだが聞いてくれるかな?」…はあ、別にいいけど」

どうやら柳は私に話があるらしい。再び机の上に座り柳に話すよう促す。

「…まだ友人の誰にも話した事はないんだが…実は、俺も音楽が好きでな。キーボードを独学で練習している」

…ん?
……音楽が好き?柳が?

そんな設定原作ではなかったはずだ。ましてやキーボードだなんて、アニメでも漫画でも柳がキーボードをひいている姿なんて見たことがない。
まあその辺は後でお兄さんに聞くとして……ミ、ミスマッチすぎるぜ…!!

「風篠がミスマッチだと思っている確率92%だ」
「うん、思った」
「フッ、素直だな。…まあ、本題に入らせてもらおう。風篠、君の声とギターの腕を見込んで頼み…と言うか、提案がある」
「提案?なに」

…次に柳の口から出てきた言葉は、とんでもない言葉だった。

「……俺とバンドを組まないか?」






突然のお誘い

それはYesと答えるべきか、Noと答えるべきか






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