05

トリップして少し経った日の朝。
今日は朝からなんだか不機嫌だ。
なぜ不機嫌かと言うと、教室に入り自分の机で再び眠りにつこうとした私の耳に、かん高い黄色い声が入ってきたからだ。

「ちょっと、テニス部の3強が揃ってるよ!」
「マジヤバくない!?」
「キャー!幸村くんてほんとカッコイイ…!!」

…。3強だってさ、3強。
…………リアルにモテモテなんだね。
というかお嬢さん達、口元に手ぇあててコソコソ話してるつもりなんだろうけど丸聞こえですからね。

まあ3強を見たいという気持ちはもちろんある。
が、私は別に彼らの顔を知っているし頭の中にしっかりと刻みこんである。
この眠気を我慢してまで廊下に行って見に行く気持ちにはなれない。

「…寝よ」

机に突っ伏して夢の世界に旅立とうとした私は、次に聞こえる声のせいで、再び現実に引きもどされる事となる。

「ジャッカル、抜き打ちチェックだよ」
「は、なんのだよ?」
「教室での過ごし方だ。たるんだ過ごし方をしている奴には今日の部活で特別メニューを行ってもらう」

…ワオ、驚いた!
なんと3強はこの教室に入ってきたのだ。
道理で女子の声が大きくなったはずだ。
ジャッカルの机(ちなみに私の机の右の右の前の席だ)をチラリと盗み見てみると、この前の雨の日に偶然屋上で出逢った彼と目が合ってしまった。…気がする。
目が合った状態で両者一瞬固まった後、私はその視線を窓の外へと移した。

「……」

うわあ、こっちに来たよあの人。
女子は廊下の外にも小さな群れを作って彼らを見ている。夢小説とかだと『なにあの女』みたいな感じになってしまうのが定番だ。…まあ、別にそれもオモロイかもだけど。

「おはよう風篠さん」
「…おはよ」
「風邪は引かなかったようだな」
「…まあ」

柳は私の机の前まで来てそう声をかけた。
まあ、あんな光景を見てしまえば誰だって不気味に思うだろうし、気になって仕方ないだろう。もし単純な奴なら私の事を幽霊かと思ったかもしれない。

「なんだ柳、風篠と知り合いなのか?」

ジャッカルが言った。
…知り合い?全然。会うのは2回目ですが。

「この前屋上で会ったんだ。精市には話したろう?不思議な女子と会ったと」

ほーほー、柳は私の事を幸村に話したのか。
恐らくこんな事、昔なら顔がニヤケてしょうがなかっただろう。だが今は最高に眠い。そして小うるさい女子達のおかげで不機嫌だ。自然と眉間に皺が寄っていく。いや、別に怒ってる訳じゃないんですよ。
…というか、なぜ柳はまだ私の机の前にいるのだろう。幸村達は三人で談笑(?)しているのに。

「そういえばまだ名乗っていなかったな。俺は柳蓮二だ」
「ああ、はい、柳君ね。うんよろしく」
「…ときに風篠さん、君は音楽は好きかな?」
「…は?」
「屋上でYUIの曲を聞いていただろう」
「ああ、あれね。…まあ、音楽は好きだよ。昔は友達とのバンドでギターボーカルやってたし」
「そうか。…フッ」

…え、なにそれ。
柳はフッと笑って幸村達と教室を後にした。
柳のあの笑みが何を意味するのか私には見当もつかないし、特に気になる訳でもなかったので考えるのをやめた。
…しっかし、柳もYUIとか聴くんだなー。






トップの三人

あいつらが近くにいる時って、かなり分かりやすそう。





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