09

次の日。
私はいつもと変わらず学校に来て授業を受けていた。(教師の話は聞いていないけれど)
窓から射し込む太陽の光を体に受けながら、私はその手で携帯をいじっている。
なんでも、私行き付けのオカルトサイトの人達が現実に集まって、サイトの管理人主催のスポット巡りを企画したそうだ。
所謂、オフ会。

「(こりゃぜったい参加っしょ)」

このサイトの管理人は私と同じく中学生らしい。しかも掲示板やメールでやり取りしてみれば、かなり気が合う事が判明した。
そして、彼がたまにメール配信するホラー小説はとても面白い。
幾度かやり取りをする内に管理人やサイトの客とも打ち解けすっかりオカルト仲間。そんな彼(彼女?)らと現実に会ってみるのも面白いだろう。

「ふわぁ〜…」

参加希望メールを送ったところで、授業終了のチャイムが鳴った。





昼休み。
私はギターをもって屋上へと赴いていた。
人気スポットのような気がするのに全く人のよりつかないこの場所は相変わらず閑散としている。
屋上は既に私の特等席と化していた。

「いい天気だ…」

私は相変わらず放置されっぱなしの机の上に座りギターを用意、オーディオをスピーカーに繋げてスイッチを押した。
テンポよく流れる音楽。まるでそれに合わせるかのように吹く風。
掻き鳴らすギターから伝わる振動。
気分はサイコーだ。

前奏が終わる。
息を大きく吸い込み伴奏に合わせて声をだした。曲はYUIのagain。
私が大好きな曲だ。
スピーカーから流れてくるのはカラオケモード、つまり伴奏だけの音楽で、昔練習するときなんかによく使っていた。
昔使っていたこれがここにあるのは、気がつくとなぜか私の持ちモノが全てこちらの世界に来ていたから。
お兄さんに聞いてみれば、私をこの世界にくるはめにさせたせめてもの償いらしい。変なところで律儀な人だ。

もう少しで1番目のサビに入る。そんな時だった。

「お前さん、なかなかいい声じゃの」

……。
せっかくもう少しでサビだったのに、なんだ、こいつは。
盛り上がった伴奏だけがその場に流れていく。
一気に気分が萎えた私はオーディオをとめてKYすぎるその少年に視線をやった。

「…なんだ君」
「まあそう睨みなさんな」

すみませんね目付きが悪くて。元々なんだわ。

…仁王雅治。
テニプリの中でも結構好きなキャラクター上位に位置するこいつは、現実にいたら関わりたくないキャラクターでも上位に位置していた。

「俺は仁王雅治じゃ。お前さん、ジャッカルのクラスに転入してきた奴じゃろ。確か……風篠?」
「そうだけど」
「ククッ、不良っちゅー噂はあながち嘘でもなかったようじゃな」
「…喧嘩うってんの?」

ニヤニヤ笑いながらこちらに近づいてくる仁王。どう考えても喧嘩をうっているとしか考えられない態度だ。
………イラッ。
仁王はやはり飄々とした態度で掴みづらい。
…無理。無理だわこれ。対処できる自信ないわ。

「(……やっぱり関わりたくねえ!)」

そう思った時だった。

「怜、やはりここにいたか」
「あ、ああ蓮二」
「参謀…?なんじゃお前さんら、知り合いか」
「まあな」

蓮二、今ばかりはお前が神に見える!!
…そんな事を言えば彼に引かれるのは目に見えているのでなんとか飲み込んだ。

「仁王、これから怜と大切な話がある。すまないが席を外してもらえるか?」
「…ま、参謀の頼みとあっちゃ断れん。じゃあな」
「ああ、すまないな」

屋上から出ていく仁王の姿が完全に見えなくなってから、蓮二が話を切り出した。

「さて、昨日メールで聞いた話は確定事項という事でいいのか?」
「うん、山吹の亜久津仁。アイツはすごいわ。…しかももっと伸びそう」
「…そうか。ならばお前の耳を信じよう」

仁に会った時のいきさつ、彼の腕前などを蓮二に話す。
彼はそれらをノートに書きとっていった。

「ふむ…俺もメンバーに加えるとまではいかないが、目星をつけている人物がいる。今日は部活がないので放課後その人物の学校に向かおうと思っているのだが…怜もどうだ?」
「う〜ん…うん、行く。場所は?」
「東京だ」

東京、ねぇ…。





放課後。
部活へ向かう者や帰宅する者がちらほらと教室からでていく中、私は蓮二が来るのを待っていた。
両方動いたらすれ違いになる確率87%だから俺がそちらに迎えに行く、だとか。

「東京ねぇ〜…ん?」

携帯のバイブレーションが鳴りメール受信を知らせた。
例のオカルトサイトの管理人さん、ピヨからだ。
内容はオフ会の日時と集合場所、当日行く場所と各自の持ち物が書いてある。ちなみにまだ変更の可能性有り、との事だ。

「了解…っと」
「怜、待たせたな」
「おぅ、待たされた」
「…おかしな返し方をするなお前は」

ピヨに返信をしたとこで蓮二が到着。
荷物を持ち教室を出る。教室にいた女子数名がコソコソと話しながらこちらを見ていたが、特に気にしない事にした。
うん、ごめんなお嬢さん達。そういうんじゃないから安心して。

「今から東京行って間に合うのかね」
「それは大丈夫だろう。向こうは部活があるだろうしな」
「そか」

蓮二と二人で廊下を歩くのは少し目立つかもしれない。廊下で立ち話をしていた女子達が蓮二を見る。

「…やっぱ人気なんだなぁ」
「なんだ?」
「いや、なんでも…」
「柳せんぱーい!!!」
「…ん?」

突然の後ろからの大声。それはどこか聞き覚えのある声だった。

「…森久保さん…!!」

ボソリと口から漏れた言葉は誰の耳にも拾われていなかったようで、私は一人ほっとしていた。






中の人

中の人ネタ、この世界じゃ禁句かも。





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