7話
「そ、そんなことしてる場合か!あんたら!!!」
ギンの叫びで俺達の生温かった空気が一気にはりつめた空気に戻る。
「そんな子供までいるんだ!ドンの力をさっきみたハズだろう!?逃げた方がいいぜ!!」
俺の事やみんなの事を心配してくれるギンはいい奴だな。
それを見たサンジ兄はふっとタバコの煙を吐き出し言った。
「お前に言っとくが、腹を空かせたやつに飯を食わせるまではコックとしての俺の正義。だけどな、こっから先の相手は腹一杯の略奪者。これから俺がてめぇの仲間をブチ殺そうとも文句は言わせねぇ、この店を乗っ取ろうってんならたとえてめぇでも容赦なく殺す、いいな」
そう告げたサンジ兄にギンはゴクと喉をならした。サンジ兄がいった台詞はもっともだ。例え助けた相手であろうとも大切な物に牙を向いてきたら切り捨てるまで。
内心サンジ兄に同意しながら俺はルフィ達に視線を向けた。ひとしきりサンジ兄を褒めるルフィ、怯えるウソップ。宥めるゾロ。
そんな三人に俺は近づいた。
「…………あんたたち」
「ん?」
俺が声をかけるとサンジ兄の方を指差すルフィは首をかしげ、あっ!お前っあの時おっさんの部屋にいたやつ!と声をあげた。
「なんだなんだ?」
「ん?」
「挨拶が遅れたね、俺はアクリ。サンジ兄の弟だ。」
「弟!?あいつ弟がいたのか!」
そう楽しげに言うルフィに俺はうんと、頷いた。
「ねぇ、あんた達はサンジ兄を仲間にしたいんだろ?」
「ああ!!」
元気いっぱいに答えてくれたルフィに俺は目を細める。うん、好感触。いくら前世で一方的に知っていてもやはり直に会ってみない事にはわからない。
「じゃぁさ………もしサンジ兄があんたたちのコックになったら俺も一緒に行っていいか?」
「え?お前もか?」
俺が聞きたかったのはそこだ。
船長のルフィの言葉がないとサンジ兄とグランドラインに入れない。不思議そうに目を瞬かせるルフィに俺はうんと、頷いた。
「そう。サンジ兄と約束してるんだ、海に出る時は一緒にってね」
俺が そういうとぱちぱちと瞬きした後、にっと笑ってルフィはいいぞと言ってくれた。
「ありがt「ごらっアクリ!俺は行くなんて一言も行ってねぇぞ!?」
慌てていい募るサンジ兄にもしかしてがあるかもしれないだろ?としれっとした顔で告げた。
「もしかしてもくそもねぇ!」
そんなもしもがあるんだよ、サンジ兄。
そんな言い合いの中ルフィはそういえばと視線をギンに向けながら聞いた。
「ギン、お前グランドラインの事、何もわからねぇって言ってたよな、行ってきたのにか?」
的確な所をついてくるルフィにギンは頭を掻きむしった。そして怯えながらいい募った。
「わからねぇのは事実さ、信じきれねぇんだ…………」
そう言い募っていくギンの話を聞けば聞くほど俺は遠い目になっていた。
だって聞けば聞くほど可哀想だったからだ。
あの男にかかったら艦隊さえもおもちゃだ。
その時もただの気まぐれだったんじゃないだろうか。
俺はシャンクス達と航海していた時に出会ったやたらと好戦的な男を思い出した。
俺に天武の才があると見出したあいつは俺に会うたび幾度となく"夜"で攻撃をして来たのだ。え?戦ったのかって?戦うはずないだろう、7才だぞ?7才が最強に勝てるはずがないだろう。
おれは死に物狂いで逃げたさ。
あれだ俺の才能なのか帰る前にはミホークの剣撃を相殺出来るようになったのがビックリだけどな。
遠い目をした俺にサンジ兄やウソップ達は不思議そうにしたが、そんなことよりこの次が大変だろう。今響き渡る雄叫びの中、来るであろうこと。
そう、前方にあったガレオン戦がズバン!と音をたてて真っぷたつに割られたのだ。
あぁ、来ちゃったか……
7話