7話
『……掃除っていっても、掃くゴミもないんだけど…』
目的の場所にたどりついた俺は甲板の様子を見ながらポツリと呟いた。
辺りをよく見渡しても目につく所に、ゴミというゴミは落ちてない。まぁ、それでも風に運ばれてきた砂やらがあるみたいなのでやらないわけにはいかないだろう。
けれど
『これじゃぁ、すぐ終わってしまうな』
今日与えられた仕事はこの甲板掃除のみ。
まだ、病み上がりと言うわけで初日は掃除だけと決められてしまったのだ。
これじゃぁ、かなり時間が余ってしまう。
少し悩んだ俺は、ある程度掃き終わったら拭き掃除もするかと決め、さっき案内された倉庫にバケツと雑巾もとりにいくことにした。
『ん、あった』
倉庫にたどり着いた俺は電気をつけバケツと雑巾を探して倉庫を漁っていた。
物が多い中、バケツ位分かりやすい所においておいてほしい…と、1人ぼやきやっとバケツの置かれている場所を見つけて。
『あとは雑巾か』
近くにあるはずとキョロキョロと探してみると俺の身長よりもさらに高い所に、洗われたのか雑巾が干されたままになっているのを発見した。
『………このままじゃ取れないな』
どこかに踏み台はないのか?
辺りをキョロキョロと見渡してみたらちょうど、俺が乗っても潰れなそうな木箱を見つけ踏み台にすることに決めた。
『よっと』
それは、とくにかなり思いと言うわけでもなく意外にも簡単に動いてくれて、干してある雑巾を取ることが出来た。
『こういう時、背が低いのは本当に不便だよな…。』
前世ではそこそこ身長があったせいか今がかなり低く感じる……
まぁ、五歳なんだから当たり前だけど…。
どうしようもないことを考えていても仕方ない、俺は乗っていた木箱から下り元の場所に戻した。
『ふう……これでそろったし、さっさと取り掛かるか……』
ここに置いてもらうんだから仕事くらいはちゃんとこなさないとな
よっとと掛け声をあげ雑巾を入れたバケツを持ちながら俺は扉の方へと歩き出した。
『あ…………』
「こんなとこでなにしてやがんだ、がきんちょ」
扉を開けようと手を伸ばした瞬間、先に扉を開けたじーちゃんが入ってきた。
『じ…オーナー』
あぶないあぶない……
危うくじーちゃん呼びするとこだった。
心んなかでじーちゃん呼びしてるって知られたら蹴られそうだよな、痛いのは嫌だから気を付けよう……うん。
『甲板、掃き掃除すぐ終わりそうだったから拭き掃除もついでにしようと思って、バケツと雑巾取りに来たんだ』
手に持ってるものを眼前に持ち上げてじーちゃんに見せると、じーちゃんはふんと鼻をならしきびすを返して戻っていった。
あれ?そういや、じーちゃん倉庫に用事があったんじゃないのか?
歩き去る後ろ姿を見つめ首をかしげていると徐々に遠ざかっていたじーちゃんの背が唐突にピタリととまった。
「なにしてるやがる、暇じゃねぇんだ、さっさといくぞ」
『…?どこに?』
「サンジのやつは拭き掃除のやり方までは教えてなかっただろう」
『ああ、うん』
……ん?何でじーちゃんが知ってるんだ?
そう内心首をかしげながらも気付いたことを聞いた。
『……もしかして、やり方教えてくれるのか?』
「…この船は俺の船だからな、汚されたらたまったもんじゃねぇ、わかったらさっさと行くぞ」
そうぶっきらぼうにいい残しまた歩き出すじーちゃんに俺は考えてから頷いて遅れないようにじーちゃんの隣に並んだ。
7話