6話
「最後にここがフロアだ」
色々案内され最終的にたどり着いたのはフロアだった。そこはテーブルや椅子が並べられていて、数人のコックが開店の準備に取りかかっている所だった。
「今は開店前だから、テーブルや椅子を拭いたり、テーブルクロスをかけたり、雑用として働き始めたらアクリもすることになるから見ておけよ。」
指で刺され言われた言葉に頷いておいた。
「その他にも朝の掃除を手伝ったり、お客におしぼりだしたり、帰ったあとの皿引きも雑用の仕事だからな」
笑ってそう教えてくれたサンジ兄はん?となにかに気づいたように視線を斜め左の方へ向けた。
『?』
その視線を追って、俺も目を向けてみるとそこには何故かこっちを眺めているじーちゃんがいて。
「じじいだ。」
そうサンジ兄が声を漏らしたと同時にこっちを見ていたじーちゃんとバチっと目が合った。けれどじーちゃんはそのまま何を言うでもなく立ち去っていった。
「なんだ?じじいのやつ。」
サンジ兄は首をかしげながらへんなじじいというと、気をとり直すように俺へ向き直り、説明を続けた。
「アクリさっきの続きだけどな、雑用でもやることはかなりあるから無理しないでやるんだぞ?いいか?わかったな?」
『うん』
何でか念を押された。
そんなに念押ししなくても大丈夫なんだけどな……一応中身はいい大人だし。
心のなかで呟きながらも、サンジ兄に素直に頷いておいた。
「……まぁ、アクリならしっかりしてるし大丈夫っぽいけど、無理だけはすんなよ?」
お前は病み上がりなんだからなっと、さらに念を押され、サンジ兄にもう一度頷き返した後、雑用の仕事を一通り習うことにした。
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「よしっだいたいこんなもんか、またわからなくなったら聞きに来いよ?いつでも教えてやるからなっ」
にっと笑ったサンジ兄は胸元辺りにある俺の頭をかしかしと撫でる。
「ありがとう、サンジ兄」
拙い撫でかたのそれをくすぐったい思いで感受しながら礼をのべると、おうっと笑って返事を返してくれた。
それから、一通り頭を撫でた後にサンジ兄はんーっと延びをした。
「じゃぁ、アクリ、俺はこれからまだやらなきゃ行けねぇ事があるから。お前は甲板にいって掃除をして来て欲しいんだ、出来るか?」
「それくらい出来る」
頷く俺に頷き返したサンジ兄は、さっき案内された倉庫から持ってきておいたホウキとチリトリを俺に渡した。
「じゃぁ、これがホウキとチリトリだから。疲れたら無理せず休んでいいからな?」
受け取った後、心配そうな顔で言うサンジ兄に内心苦笑をもらし俺はおとなしく頷いておくことにした。
サンジ兄は俺が思っていた以上に心配性らしい。
『読んだ』時のサンジ兄は常にゾロと喧嘩するか、ナミや女性をナンパするかのイメージの方 が強かったけど…………『弟』には以外に甘いようだ。
そんな、『読んだ』時には知り得なかった情報に俺は自然と笑みを浮かべ言われた仕事をこなすために甲板に向かった。
6話