ナツはグレイの声がする所へ駆け寄ると、彼を見て凝視した。

「グレイ!ルーシィあっちに…って、なんで脱いでんだよ!!」
「おぁっ!?」
「おまえ…ジロジロ見られてるぞ!」

グレイが脱ぎ捨てたものを拾うジュビアは、彼の名を呼びながら周りに目を向けてキッと睨んでいる。
いつの間にやら喧嘩腰に喚くナツとグレイ。その近くで接客をしていた店員が彼らに気付き、歩み寄る。
店内で流れている音楽が、よく聞こえない程に騒々しくなってきた。

「ん?なんだろ…騒がしいわね」

足元に置いてあった鞄を肩に掛けて、移動した。会計をしつつ周りを見回すと、制服の上着やシャツを大事そうに抱きかかえているジュビアが目に入る。
その先には桜色の髪と上半身裸の彼が並んで、店員に注意を受けていた。
ルーシィは溜め息を吐き、額に手を当てる。

「何かしたわね…」

慌てて三人のもとへ向かうと、ナツが気付いた。

「…ルーシィ」

制服の上着と桜色の髪が乱れている。その横で、ジュビアがグレイに上着を渡すところだった。

「何してるのよ、二人とも!」
「悪ぃ…でもよ、コイツがいけねえんだぞ!」
「まだ文句あんのか!?」
「ちょっと、アンタら…」

二人の間に入り、宥めていると、

「ジュビアは、グレイ様の味方ですよ!」
「ちょ、ちょっとジュビアまで…」

グレイの背中越しからヒョイッと現れる。何かを思い出したかのように、ナツが声を張り上げた。

「んじゃ、ボウリングで勝負だ!」
「いいぜ!」
「勝負って…」
「ジュビア…ボウリング、初めて」

教えてくださいと言い寄るジュビアがグレイの隣を占領する為、自然とナツの隣に居るルーシィ。

「燃えてきたぞ!」
「仕方ないわね…」

彼は勝負ごとが好きだからか、とびっきりの笑顔を見せている。つい先ほどまで吊り上がっていた目がウソのようだ。
息を吐き出してそっと横を向くと、

――あっ

ナツと目が合った。
彼が笑うと、ルーシィの心臓が大きく跳ねた。

「ルーシィにも手加減しねえからな!」
「あたしも勝負に入ってるの!?」
「当たり前だろ?みんなでやっから、面白いんじゃねえか!」

意気込むナツに、まあいいかと笑って答える。
肩が触れるか触れないかの距離。
そんなことには慣れているはずだがいつもと何かが違うことに、ちょっとデートみたい、と頬を染めた。
ルーシィが右手に持っている袋に気付いたナツは、問い掛ける。

「スカート、買えたのか?」
「うん」

グレイは、ナツの声に反応して振り向いた。

「すまねぇ…見てやれなくて」
「えっ!?ううん、気にしないで!」

頭を下げるグレイに笑顔を向けていると、彼の隣に居るジュビアからの視線が痛い。
そこから逃れようと、目を逸らした。

ボウリング場に向かう途中で、ナツが足を止める。

「ルーシィ、あれ…、なんだ?」
「ん?…ああ、眼鏡の専門店ね」
「オレには必要ねえモンだな」
「う〜ん、そんなことないわよ。お洒落で、かけてる人もいるって雑誌に載っていたもの」

ルーシィの発言で興味が湧いたナツは、早々と店内に入っていった。
彼に続いてルーシィや前を歩いていた二人もそれに気付いて、付いていく。

「へえ…いろんなのあるんだなー」
「グレイはなんか普通に似合うわね」
「普通ってなんだよ?」
「グレイ様はなんでもお似合いですよ!こちらもかけてみてください」

ジュビアから受け取り、かけて見せると彼女は彼を見ずに、ある一方を睨んでいた。

「どうした?」
「グレイ様、…やっぱりかけないでください」
「はあ?」
「…あの店員、さっきからグレイ様の方ばかり見ているんです!!!」
「……」

二人から少し離れた所でルーシィもキレイな色のフレームを見付けて、手に取った。
鏡を探していると、

「なあなあ、これカッコイイだろ!」

明らかにナツには大きいと分かる眼鏡をかけて、近寄って来た。何故これを選ぶのか、ぷっと吹き出す。

「あはは、似合わなーい!」
「なにをぅ!?これはどうだ!」
「てかなんであんたさっきからレンズ大きいの選ぶのよ」
「お得だろ」

なんでだ、と逆に疑問符を浮かべていた。
それならと、身近にあった眼鏡をルーシィが選んでナツに渡す。彼が選んでいたものとは大きく違っていた。

「…これはどう?」
「えー、小さい」
「かけてみて!」
「うー…」
「……」
「……」

自信があったわけではない。軽い気持ちで選んだものが、似合い過ぎて大きく目を見開く。
無言で見つめていると、黙っているルーシィが気になったのか、ナツは口を開いた。

「…なんか言えよ」
「うん…、ちょっと」
「なあ…」
「思ったより似合ってて」

――なんだろう、胸が高鳴る。

「…ムカつく」
「なんだと!?」

ルーシィの思わぬ一言に口を尖らせたナツは、再び目を吊り上げる。
火照る頬を隠す為に俯き、自身の金髪を撫でた。青いリボンが揺れる。
彼女から視線を移して、似合うと言われた眼鏡をしたままナツは鏡を覗いて首を傾げていた。

「ナツ…、そろそろ行かない?」
「おう!グレイ…まだ見てんのか?」
「うっせえな!」
「良いから、行くわよ!!」

口喧嘩をしている二人の背中を押して、お騒がせしましたと会釈をする。
お店を出ていくその一瞬、ルーシィの横で、ジュビアは店員を睨んでからゆっくりと歩を進めた。

ボウリング場に着くと、他にも先客がたくさんいるようで、時折、歓声が聞こえてきた。
受付を済ますと、靴を履きかえて自分に合うボールを取りに行く。何もかもが初めてのジュビアは、些細なことにも感動して瞳が輝いていた。
専用の靴に履きかえていると、

「グレイ様とお揃いですね!」
「…いや、コレは」
「ジュビア、グレイ様と同じ色のボールを使いたいです!」
「重いから、もっと軽いやつをだな…」

グレイの名を連呼しながら、あれはなんですかと、はしゃいでいる。ペースを乱されながらも一つ一つ彼女の相手をしていた。
遊びとはいえ、勝負だと宣言した二人は全力だ。
何度もストライクを出すナツとグレイは力任せにも感じるが、予想通り、とても敵わなかった。

「うそー、またストライクだ…」
「絶好調だな!」
「グレイ様、ジュビアもがんばります!」
「ああ、行って来い」

転びそうになりながらも真剣な顔を見せるジュビアは、指導者のおかげも兼ねて初めてなりにも次々にピンを倒していく。とても楽しそうだ。
ルーシィも久々とはいえ、スコアは上々だった。コンスタントにスペアが何度か取れ、その度にやったーと両手を上げて、三人が居る場所へ戻る。
最終ゲームで投げたコースが良いところに転がっていき、本日初めてのストライクが取れた。
ルーシィは、グレイ、ジュビアと順番にハイタッチをかわしていく。

「やったな、ルーシィ!すげーじゃん」
「ありがと、ナツ!」

最後にぱちん、と重なった手のひらが少し痛くて――熱かった。

時間を忘れてしまうほど、楽しく感じた放課後の時間。思いがけずナツとジュビアも加わって、緊張感が取れた。
その代わりに心臓の音がうるさくて、高鳴る鼓動は止まらなかった。






ドキドキが止まらない…キュンキュンしますね^^ルーシィ可愛い。そして、喧嘩も遊びも全力のナツとグレイが面白くて、大好きです!


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