Last*Lost
父バカ第一号
「ほら、これが『と』で、これが『う』、な。」
「『と』、『う』?」
「そうそう、じゃ、これ全部読めるか?」
「『と』『う』『ち』『ゃ』『だ』『い』『す』『き』」
「よく言えましたああああ〜あああ可愛いなぁタクト可愛すぎるぞタクト〜タクトはううう〜」
「……。」
俺は冷たい目で父…ジンをみた。
「なっ…タクト? そ、そんな目で父ちゃんをみるのか? ちょ、まっ、タクト悪かったって、何が駄目だったんだ? 直すから、なっ、タクト!俺はタクトのおぼえがはやいもんだから嬉しくてだな、えっ、頼むから嫌いにならないでっ、あっ、ちょ、顔背けたっ!えっタクト、タクト〜?」
完全に無視である。
ちなみにさっきまではハンター文字の練習をしていたのだが、
ことあるごとに何かと恥ずかしい文章をなんの悪気もなく読ませやがる。
なんて親バカなんだ!俺の中のジンさん像が崩れていく……もう呼び名は「ジン」、いや「こいつ」で充分かもしれない。
けどま、何だかんだで優しいから嫌いにはなれないし
腐ってもこの世界で初めて会って俺を助けてくれ、あまつさえ育ててくれるとかいういい人で。
『父親』って、いたらこんな感じなのかな、と。
少しあったかい気持ちになれたりしている。
「そうだ、そろそろ服もぼろっちくなってきたし、明日は街の方に行ってみっか?」
俺は振り向き、ジンに大きく頷いた。
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