Last*Lost
9
取り合えず何か始めなければ何にもならないということで トラックに乗って運転してはいけないかと手足をバタつかせたが、紐は足りなく、しかもこの紐よくみれば神字が組み込んであって強度はあり得ないほど強かった。
古書店まで約80km。
ううう…俺ってばトラックに繋がれ餓死する運命なのかも。
溜息をついてその場に座る。
それに合わし紐が引っ張られ、少しだがトラックが動いた。
「えっ?」
動…いた?
まさかと思い一歩、二歩、と前に足を進めると買物カートを引っ張るようにトラックが楽々と移動する。
いままでの修行は思ったより自分に力を付けたようだ。
「やった帰れる!
そうと分かったら急いで帰ろ!! 走っちゃお!」
あまりに嬉しくて俺はハイになっていた。そしてそんな俺は後に起こるであろう惨劇を自分からまねくことになる。
ああ、どうして忘れていたんだろう。
車は急に止まれないってこと
泣きながら走りつつ思う。
気づいたときにはかなりの勢いになっていたので急停止でもしようものなら慣性の法則に則ってトラックがぶつかる。
なるべく一定の速度を保たなければ、このままどんどん加速してしまう。
減速少しずつしようとさっき試したけど、後ろから迫るトラックが怖すぎてできなかったし。
とか思ってるうちにもうすぐ古書店着いちゃうし!
こういうとき町外れでよかったって思う!
まわりに人家あったら危ないし、不審者扱いされるのも切ないからな…
しかしどうするよ、俺!
このままじゃ古書店突っ込んじゃうし絶対ロゼッタさんに半殺しにされる……!
と、店の前にロゼッタさんが立っていた。
それもそうか、あれだけ大きな音させて大声で泣きながら帰ってきてるんだから。
尚更このまま突っ込む訳にはいかない。こうなったら踏ん張ってトラックとめるくらいしか…!
グリップターンして右足を前にだし、地面をジャリ…ッと踏みしめた。両手両足に集中して…思いっきり力をいれる!
トラックは物凄い音をさせてひしゃげてしまった。
……………………何それ怖い。
けど古書が一部バラバラになったりして静かに笑い怒っていたロゼッタさんの方が何百倍も怖かった。
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