Last*Lost
05
「大丈夫ですか?」
「あぁ。それはまぁ、ね」
そこで2人の目が合う
「ーーーあっ、あーっ、あああああああ!?
貴方は、あ、あのときの伝説の料理人サッチニッチ=カールウェードゥルーズ?!」
「だからそれは誰だよ!」
そうか、あのときの名前をききそこなった少女だ。
「こんなところで会うなんて、な」
気まずそうに目を逸らすフランスを少しも気にせずあの日の少女…ジャンヌは問いかけた。
「…あのときも大怪我してましたけど、一体全体どうしてそんな危険な目に?」
こいつは俺が国とも知らないで助けたのか
そう思って目眩がした。
「俺は人じゃないんだよ」
「えっ?」
ぺたぺたと頬や手を触ってくるジャンヌにもう一度言い放つ
「俺は人じゃないんだ
この国、フランスそのものなんだよ」
瞬間、大きく眼を見開き、その眼が自分の青い瞳をみつめるのがわかった
「…うっそだ〜
こんなにあったかくってこんなに瞳ひかってて
こんなにも人そのものなのに…」
「嘘じゃない。これでも君の何十倍と生きてるんだよ」
「…そう、なんだ
なら、私のことも 歴史の中のちょっとした1人として
すぐ忘れちゃうんだろうな」
そうしてジャンヌはとても寂しそうに笑った
まぁ、そうなるかな、とは思ったが、
正直忘れたくはないと思っていた。
今思えばとても馬鹿らしい
いずれ一生忘れられる筈もないことになるというのに
← ■ →
▲