Last*Lost
03
「絶望したああああああああ!」
何故
キッチンで
まな板に
包丁が突き刺さっている!?
っていうか本当にこりゃあ料理してたのか?
なんていうか、そう
襲撃された……みたいな
と、申しなさげに少女がこちらをみている。
「ん、あ、あぁ、気にしないでいいからね? ほら、座ってて座ってて。」
「でも…」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ♪」
心配そうな表情をみせられ戸惑いつつも
俺はいつもどおり手際良く料理を始めた。
軽くこすれる食器の音に、すごい勢いで食事を平らげつつある少女。
マナーは守っているはずなのに勢いが勢いだからがさつにしか見えない。でもどこか可愛らしい食べ方だ。
食べている量は可愛いなんていえるものじゃないが
「美味しい?」
あまりにも目を輝かせ食べるものだから思わず聞く
「ぷぁい! おいしいでふ! お料理お上手なんですね!
はっ!! まさか貴方あの伝説の料理人サッチニッチ=カールウェードゥルーズ?!」
「違ぇよ!ってかそれ誰だよ!」
やけに長い名な上にどこの国のやつかもわかんねーよと思いながら少女を小突く
と、少女は綺麗に笑った
よく笑う奴だなと思った。
自然と笑みも零れる。
『この時間が終わらなきゃいいのに』
ふとそう考えている自分に驚き首を振る。
自分は国家であるから
彼女とは生きる場所が違うから
「そろそろ俺、帰らなきゃ」
気づいたら口走っていた
「もう、大丈夫なんですか?」
「ああ、ありがと」
最後に一言交わしたきり、振り返りはしない。
きっと俺みたいな『国』にはもう縁のない奴なのだ
怪我した足が重い。痛みがジンジンと歩くたびに響いた。
「あ、名前聞き損ねた……
まぁ、もう会うこともないだろうし、な」
その言葉は、空気にしんと溶けた。
← ■ →
▲