Last*Lost
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02


次の瞬間見えたのは、薄汚れた壁だった。


「……ここ、は?」

「あー! 起きました?」


見知らぬ女の声が背後からし、振り向くと……


軽くウェーブがかったショートカットの少女がいた。

首にロザリオをかけ、肩には…まるで大刀でも入っているような麻袋を背負っている。

みたところフランス人のようだ。


(…ぁ〜、羽に見えたのは荷物か…)

「君が助けてくれたのかな? ありが ぐぅ〜


………空気を読まないお腹が空腹に唸りをあげたようだ。


すると少女はくすっと、透明に、綺麗に笑った。


「何かつくりますね」


そんな微笑みにうっかり見惚れていたら、また音、音、音。形容するならば『ぐきゅるるるるるる』とでもいうのだろうか。

凄まじい音がした。

しかもその音源は……俺じゃない。


「さっき君からもっとすごい音がしたんだけど…物凄くお腹すいてる?」


「えっ、そんなことぐきゅるるるぐううううぐぉ〜ぐぎゅぅ〜ぐるるるるるる
………ありますね。」


音源は少女だった。

っていうかこりゃあ獣の唸り声だろ。
人の体からも獣の唸り声ってだせるのか……

むしろこいつ人間じゃないんじゃねーか?


そんな疑問を抱いていると

「ま、つくりますからゆっくりしててくださいね」

そう言って少女は部屋を去った。


どうやら俺が国だとはばれてないみたいだがな…一般人みたいだし

だったら尚更、すぐにでも出ていかないと

そう思い立ち上がり、少女が気を利かせ置いておいてくれたのであろう自分の荷物を手にとった途端、その重みに激痛が走った。


…まだ傷が塞がり切ってない、か。


ならば今は少しここで休ませて貰おうか。


幸い国と体調がリンクしているだけあって
この様子だと本調子までそんなに時間はかからないだろう



そうして、ぼーっと少女の出て行った扉を眺めていた。

扉の向こうからは
トン…トン……という包丁の音。

ん?

なんか、段々包丁の音が大きくなるんだけどっていうかこれはもうトン…トン…なんて生易しい物じゃない……

いうならば


『ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ』



………怖えええええええええええ?!!!!
なっ、こいつオーストリアの親戚か何かかよ?!!


更に大きくなっていく、音。
そして

ドガガガガガガバゴゴゴベッゴゴゴゴー!!!!!


爆発した。

え、

爆発した。

爆発した。

爆発、した。


扉が吹っ飛んで中から煙がもくもくとあがっている。


「うっそだああああお兄さんそんなの信じたくないよぉぉぉぉ!

っていうかあいつ大丈夫かよぉぉぉ!??!!!」


と、きこえる咳き込む音
そしてみえる人影。どうやら無事らしい。


「ごっほごほごほっ…ふっ……ふぁー、またやっちゃった……」


少女にとっては料理で爆発させるのは日常茶飯事らしい。
ちょっと待てオーストリアでも音だけだぞ…

少女からただならない何かを感じる……


「あはは、すみません。私料理苦手で…指ちまっと切っちゃいました」

「指切ったレベルじゃねーよこれは」


黒い煙に呆れつつ、言う。


「もう、お兄さん料理つくるから君さがろうか…」


手くらいなら動くから料理には事足りるだろう。

「なっ、悪いですよ! それにまだ怪我が…」


「大丈夫大丈夫、料理は得意なんだよ。これくらいの怪我で腕にぶったりしないしない」


「そうじゃなくて…っ」


「いいから下がるの!」


「…すみません」

やっと少女は引き下がった。


さてと、ではでは料理をはじめようかな


そして俺はまさかキッチンで絶望する羽目になるなんてこの時点じゃ全く予想もしてなかった。



  






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