Last*Lost
そうだ、街にでよう
后吾郎さんが用事で外出、それに合わせて皆修行は休みになった。
そんなわけで今日は初めて街へ行く。ハンゾーも一緒だ
いつも修行で屋敷に籠ってばかりで、梅篷に来て数年になっても未だ行ったことがなかったなんて…自分のことながら気づかなかった!
あれほどゾル邸にいたとき外に行きたがったのに今はそんな気持ちどこにもなく、梅篷家の居心地のよさに染まっている
そんなわけで、ハンゾーに案内してもらう初めての街、ジャポンなのである
初めてお小遣いなるものを貰い(しかも結構多い)落ち着かないまま街へ向かった
「うん、変なの」
どこか似ていて懐かしいような雑踏、でも何処か違う街並み
電器店のショーケースからのぞくテレビが流すお昼の番組名「笑って?いやだとも!」だとか
本屋に立ち寄ってみれば少年ジャプンがあったりだとか。……ジャプンって水に沈みそうな音だな
戦利品は某ゲームにそっくり、その名もファーストファンタジー。ジョイステでプレイするようだ。あれ、ハード持ってないどころか梅篷家にはテレビないぞ…?!
うん……パッケージ眺めて楽しむからいいんだ……
「しかし意外。和服って売ってないのな…」
街を歩いて服屋を覗くと和服は皆無
梅篷では和服の人間ばかりだったので逆に街ゆく洋服の人々に違和感を感じる
「まあ、今時着物や袴は珍しいだろうな」
そういうハンゾーも街に溶け込むためとかいって洋服…薄手のセーターにジャンパー、ジーパンを着ていて
うん、違和感ありすぎだよこのハゲ
「おい何故目をそらすんだ」
「いや…みていられなかったから」
そういう自分は着物(ちゃんと男物だ)に羽織りで
ずっと和服だから慣れててこっちのが着心地いいかもしれないなどと
今の着物じゃあ動きにくいけど
「お、あれお前んとこの兄さん?」
「あ、ほんとだ。さくたにい……と、横に女の人…?」
咲太兄が笑顔を向ける少女…兄と同い年ぐらいだろうか。清楚で凛とした表情、でもどこか可愛いらしさがあり、桜色の着物にあわせ結われた黒髪もとけばきっと綺麗なストレートなんだろうなと思われた
要するに美人さんである
咲太にぃとあわせて美男美女。うん、眩しいね!
「じゃあまた、小春さん」
「えぇ、咲太はん、きいつけておかえりよ。」
どうやら少女は小春というらしい。というか京美人!京美人だよ!
「お前の兄さんも隅に置けないな…」
「咲太兄さんだしねえ。色恋沙汰に無縁に見えて意外とちゃっかり…」
しているんだな、と言おうとしたところで咲太にいがこっちに向かって歩いてきたので、
後ろめたいことは何にもないのになんとなくハンゾーと建物の陰に隠れた
夕方家に帰れば丁度后吾郎さんが帰宅したところだった
「お帰りなさい」
「ああ、タクトか。ただいま、お前もおかえり。」
「ただいま。今日はまた修行休みにまでして何の用事してたの?」
「まあそれはあとのお楽しみってことで」
そうやって后吾郎さんはにやりと笑ってみせた
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