余事中設定
・おじさんが子供だよ!
・倉庫がいっぱいのとこでの戦いから唐突に始まるよ!

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気がつけばその腕の中にいた。
冷たい甲冑越しに感じる力強い腕。それが薄れ行く意識を辛うじて引き留める。
痛い、痛い、痛い。
ぼやける視界でなんとか腕の外を見れば、あの蟲達がセイバーの剣とランサーの槍により地に落とされていて。
あぁ、やっと解放されたんだと思った。
一時だけでも自由になれるのは嬉しかった。

「――…子雑種、無事か」

――――――――――――――

その子供が現れたのは唐突だった。
貨物コンテナに囲まれたそこでサーヴァントがこんなに集まったのは偶然で。そしてその子供が現れたのも偶然のこと。
その子供はこの場には不釣り合いな子供だった。
泥だらけで血だらけではだけた、汚れていても一目見ただけで上質なものだとわかる着物に、素足。
可哀想なほどに何かに怯えた蒼白い顔。
逃げるように駆け込んできた子供がその場にいたサーヴァント達に悪い顔色をさらに悪くしたのには流石に可哀想にはなった。
その小さな体から漏れ出すのは紛れもない魔力。それも密度の高い濃厚な魔力だ。
そしてその魔力を喰らうように飛び交うのはがちがちと強靭な顎を打ち鳴らす蟲。
ひぅ、と小さく悲鳴をあげた子供が駆け出そうとしてその剥き出しとなった細い足を弾丸のような小さな蟲が撃ち抜いてどしゃりと地面に体を叩き付けることとなった。何匹もの蟲がその衣を裂き白い肌に赤い線を引く。
最初に動いたのは誰だったか。
気が付けば一瞬の内に子供を貫こうとした蟲はどこからともなく飛来した弾丸で撃ち落とされ、銀色の液体が踞る子供を守るように包み込む。
誰よりもすばやい英雄の槍が渦を巻く蟲を叩き落とし、最優の騎士王が持つ刃が蟲を切り裂いて、征服王の雄叫びと共に天から降り注ぐ雷が蟲を焼き尽くす。
そして。
黄金を身に纏う王の腕がみすぼらしい子供に伸ばされる。
引き上げられた体と唐突にかけられた言葉にぽかんと子供が王――アーチャー、ギルガメッシュを見上げた。
子供を腕に抱えその顔を見下ろしたギルガメッシュは、思わず眉を歪める。
軽い。肉が全くついてない。
それに。
黒水晶の片眼。白濁した片眼。白を通り越して青白い肌。色の抜け落ちた癖毛の白髪。まるで何かが這い回ったようなはん痕が浮かぶ顔。
紅い眼差しが己を見下ろしていることに気が付いたのか、びくりと体を強張らせ王を見上げた子供が動く手で醜い顔を隠し下を向く。
その動作が酷く鈍く、どうやら半身はあまり動きが利いていないようだった。
なんだ、これは。
明らかに虐待された、いや、虐待されている子供。それも――極めて魔術的な、
ギルガメッシュはただ言葉もなくふわりと揺れる混じるもののない銀糸を見下ろす。
己とは正反対のそれ。
なんと痛々しい…。
思わず腕を挙げ、白い髪に触れようと手を伸ばす。
やっ、と短い悲鳴と共にがむしゃらに振り上げられた小さな手がギルガメッシュの手を払う。
怯えが伝わった。
小さな体で足掻き、それでもギルガメッシュの腕はびくりともしない。
その子供――間桐雁夜は恐れていた。魔術師を。魔術を。それに関する何もかも。
だから逃げ出したのだ。
"あの子"を助けるために。
逃げて、案の定"父親"の蟲に見付かり何とか振り切ろうと慣れない外を駆けて大分前に会った"あの人"の魔力を探してここまで来たのだ。
そしたらどういうことか。そこにいたのはあの人ではなくて。見知らぬ人たちで。
力強い腕が己を抱き上げる。

「案ずるな、あれはすぐに消える」

冷たい籠手越しの手が優しく、ひたすら優しく頬を撫でる。
硬く熱のない甲冑にひたりと触れるとかすかに頭上から笑い声。瞬く間に硬い甲冑の感触は消え去り柔らかい布とほんのりと暖かい温もりが触れる。

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ギル雁ぷまい!
チビ雁夜くん愛されを書きたかった!
この後鱒鯖総出で優雅の所に殴り込み→間桐家に殴り込み→アインツベルンに殴り込みの予定だったよ!



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