キミとちゅう
「んむっ!?」
背後から後頭部の髪を捕まれグイッと後ろに引っ張られた……と思ったらバクッと口を塞がれた。
「……………………」
「んっ、む、ぐ、ぅっ!?」
キス、じゃねぇ…!
唇と唇が合わさってるというより何だコレっ!?
いうなればこれから俺の唇を一度で全部噛みちぎる為に歯を当ててますよ、みたいな。
口の周囲に感じる歯の硬い感触に、俺は渾身の力で相手の胸を押し返そうとした、が。
ガシっ! ギリィッ!!
「んぐぅう!!(いってぇ!!)」
一瞬後頭部から手が離れたかと思ったら相手の胸に当てていた俺の両手はあっという間に後ろへと締め上げられた。
勿論その間も口は塞がれたまま。
余程力が強い相手なのか俺の両手首を片手で抑えてやがる。
悔しさに歯を噛み締めてたら再び後ろ髪を掴まれ、今度は顔を上向かせようとでもしてるのか力任せにグイグイと引っ張ってきた。
「ぐっ!むぐぐぅ!!(ちょ!抜ける!!)」
「………………もう少し色気のある声は出ないんですか」
「ぶはあっ!!」
やっと口を解放され、詰めていた息を思いっきり吐く。
ぜぇぜぇと呼吸しながら馬鹿な事を吐かす相手を見れば……アマイモンだった。
「……っきなり何すんだよっ!」
まだ腕をキめられてるのでゴシゴシと服の肩辺りで口元を拭いつつ睨みつければ、アマイモンは首を傾げつつ口を開いた。
「……キスですが」
「今のはキスじゃねぇよ!!」
「………そうなんですか?」
更に傾ぐアマイモンの頭。
「…………じゃあどうすればキスですか?」
「どうって……と、とりあえず歯ぁ立てんのはキスじゃねぇだろ…」
何分豊富な経験など無い燐なので説明に困る。
「歯を立てなければキスですか?」
「知らねぇよっ!」
「………じゃあもう一度です」
「んんっ!?」
キスについて考えてて油断してたトコに、また後ろ髪を掴まれて口を塞がれる。
くそ…!油断し過ぎだろ俺……っ!!
ぬるり、と唇に感じたぬめりにゾクリと粟立つ背筋。
更に唇を往復するようにぬるぬるを押し付けられ、呻くしかない俺の頭を更に強く引くアマイモン。
あまりにも首が反ったせいで微かに開いた口の隙間からぐいぐいと入り込んで来たそれは俺の舌やら上顎やら……もう何処と言えないぐらいに口の中全体を探りまくり、その感覚に頭がボーッとしてくるやら身体から力が抜けるやらで……
「……んっ、ふ……ぁ…」
「………気持ちイイですね、キス」
アマイモンの唇が離れた瞬間にガクリと折れた膝が何だか情けなくて泣きそうになる。
何で笑ってんだよ俺の膝……!!
「………唇を噛みちぎって血まみれになるのも楽しそうですが、キミとなら今のキスもイイ」
「…………おま…何がしたくてこんな事したんだよ……」
無表情に話す相手にそう問えば。
「?………キスですが。キミと」
「ー−−っっ!!」
そんなコトを素でぬけぬけと言われ、俺の頭は更に沸騰したのだった。
オワリ
アマイモンはキスの間も目を閉じないに一票。
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