季節外れの蝉


まるで出口のない迷路を
永遠に彷徨っているようだ
どこまでも続く切れ目ない壁が
大きく立ちはだかり
眩暈を引き起こす
 
 
 
 
 
激しい虚無感に苛まれる
進めども進めども
終わりのないこの暗闇に
まるで抜殻のように
 
 
 
心はどこかに置き忘れてしまった
 
 
 
苦しくて堪らない時に
季節外れの蝉が泣く
誰もいなくなった
その空間で
たった一人
時期外れな生を
まるで誇示するかのように
哀しく
切なく
蝉が泣く
 
 
 
 
 
たった一人
 
 
 
余生を生きるかの如く
無気力で
無関心で

 
 
やがて地面に横たわるその瞬間まで
 
迷路は果てしなく続くのだろうか
 
たったの一筋の光もない
この暗い暗い空間で
 
 
 
 
 
感情という感情が
涙が流れるように
溢れでて
止まる事を知らない
 
激しい慟哭
 
仮面を付けて
それを隠さなければならない
哀しい現実に全くの無表情の能面を選ぶ
 
 
 
 
 
能面は雄大にその気持ちを静かに語りかけるが
決して表にでることはない
その感情を
舞に表現することもなければ
語られることもない
 
 
ただ
あの蝉のように
逃れられない現実の中で
精一杯に苦悩する
 
 
唯一つの希望も持てず
そう
巨大迷路を
自ら迷い込むかの如く
むやみやたらと
めちゃくちゃな方向へ進み
ただひたすら地に還える時を待つ
 
 
 
 
 
自分がここに存在したと
残骸を残す
その日まで



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