破片の記憶


たくさんの
まるいカラフルな硝子の球を
頭上高くから
渾身の力を込めて落とす





激しい音とともに砕け散った欠片が


一面に広がる

様々な形に姿を変えた硝子に
穏やかな太陽光が透過し屈折する

きらきら煌めく硝子の欠片を
まだまだ足りないと
さらに細く砕けるように
その上を歩く



小さな悲鳴をあげて
欠片は破片になり
それでもまだ
きらきら煌めく破片

その一つ一つに
一体どんな記憶が隠されているのだろう





遥か彼方から
太古の風が吹く

永い永い
永遠かと思うような時を渡り

太古から風が吹く

それは
硝子の破片の記憶を拾って
未来へとまた旅して行くのだろうか



未来でその記憶を垣間見た者は
哀しい記憶に涙するのだろうか
優しい記憶に微笑むのだろうか
それとも

そう……
まるで違う感覚で
記憶は記憶のままだろうか



砕け散った硝子の中に
まるでナイフのような欠片が一つ 


所詮こんなもの



言葉の一つ一つは
冷たくて鋭利なもので
人それぞれの裁量で保護をし
人それぞれの裁量で振りかざす



太古の生き物のように
全身がその固い殻で包まれていたら
跳ね返すだけの
固い固い殻があれば
少しは自身を狂気から守れるのだろうか


きらきら煌めく破片の記憶を辿って
ただただ夢を見ている
遠い遠い世界を
夢に見ている





ゆらゆらゆらと
ただただ漂いながら
優しい記憶を
夢に見ている



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