硝子の器の林檎


薄暗くなった部屋に
灯を点す事なく
ただ呆然と時が流れるのを
立ちすくむかのように待っている
 
テーブルに透明な輝きを発する硝子の器
溢れんばかりに盛られた小さな小さな姫林檎たち
 
 
 
アタシノ心ハ
終リノナイ血ヲ流シテイル
 
 
 
空には昼と夜の境目が
綺麗なグラデーションで描かれている
あの先に夜がやって来る
 
 
 
闇ノ中デ
血ノ滴リ墜チル音ガ響ク
 
 
 
ぐさりとナイフは刺さり
抉り取られたその傷は
治癒するのを拒むように
果てなく広がって行く

見えない凶器に追い詰められて
逃げ場のない現実に
いっそこのまま甘美な眠りにつきたいと自嘲する



ドウセ何モ変ワラナイ



そう
どうせ何も変らないから
例えばこの現実から
人が一人消えようと

何事もなく廻わっていくのだから

深い深い空虚が押し寄せる





どこからか流れてくる曲が
否応なしに耳に入ってくる



心ガ
バラバラ二ナリソウダ



ただ曲が流れているだけなのに
あまりにも
無神経な詩に
独り毒づく



敗者ガイイナンテ
所詮
勝者ダカラ言エルコト



そんなことに
神経を尖らす私がどうにかしてるのだろうか

そうかもしれない

磨り減らした神経が
いつの間にか
修復不可能になっていたのかもしれない





いつになったら
この闇は明けるのだろう
 
光にきらきらと輝く
硝子の器
それに盛られた真っ赤な姫林檎たち

こんなにも
きらきらと輝く日が
また訪れるのだろうか・・・



果テシナク
闇ハ続イテイル



それでも
身を焦がして待ち続ける
きらきらと輝く硝子の器に盛られた
愛くるしい姫林檎たちになれる日を



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