(5/10) 4、春の末には知り合いどうし 前


 不良というのはこの世で一番汚らわしくて薄汚れてて汚いこと甚だしい汚物だと僕は思っている。何?言っている内容が全部同じだと?当然だ、僕は中学のとき給食の食べ方が気に入らないからと不良の口から出たゲロを食わされたんだ。そりゃ汚物製造機にしか見れなくなるってものさ。君はそいつらとは違うんだろ?……ならいい。


 まあそんなことはどうでもいいので事件の話だな。あれはいつだったか、天皇誕生日は確実に過ぎていたな。
転校して一ヶ月経つか経たないかのその日に、僕は彼ら不良に廊下で待ち伏せされていた。三人で連れ立っていたかな、どうやら転校生という肩書きが悪目立ちしてしまっていたようだ。

「お前、テンコーセー……なんだってェ?あン?」
『そうですけど、あんたは?』
「オレぁ3年の××っつーモンだがよぉ、このガッコに来たからにゃあオレにアイサツするのがレーギってモンだろーがよぉ、あ?」
 どうだ、なんて頭の悪いしゃべり方だろう!虫酸が走る!きっと彼らと僕とは違う星の人間だと思わざるを得ない!だが不良よりは頭の回る僕はにこやかに返事をした。
『申し訳ありませんでした、そんな校則は生徒手帳のどこにも書いてないので……見落としてしまったのですかね。それでは』
 そう言って足早に立ち去ろうとする僕に一番手前の不良はいきなり襟に掴みかかってきてそのまま自分と廊下の間に荒々しく僕を叩きつけた。
『っ……』
「ガッコの手帳なんかどーでもいいだろッ!××さんにアイサツはどーしたってんだよ!?」

 かなりの大声だったし、何より廊下で事が起きていたから大勢が僕達の方を意識していることが分かった。しかし……いややはりと言った方が良いのか、誰でも面倒事に進んで関わろうとはしない。大半がちらりと視線だけ寄越した後背中を丸めて立ち去るか一部の生徒は興味深そうになり行きを見守っていた。本当にクソッタレばかりだと憤慨はしたが今冷静になって考えると僕もあの場なら同じことをしたよ。面倒事は嫌だもの。


 すると突如、襟をつかんでいた不良の手が弾けた。弾けた、というのはまるで野球ボールか何かが当たったかのような反動がついて僕の襟を離した様子もそうであるし、何よりも、

「なッ………あ、ひ、ヒイイイィィィィィイイーーーーーッ!俺の手がーっ!」
 ボゴォオ! と音がして僕の学生服に血の飛沫が付着する。見ると不良の手が何か固いものでいきなり削られたかのように、皮膚がざっくりとめくれてどくどく赤い血を吹き出していた。あまりにも突然すぎて数秒ほど固まってしまったが、この隙に逃げられると気づいてそそくさと混乱する現場を後にした。


 これがどう花京院典明につながるか、だと?
 そうだな、話は次の放課後に続く……





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