君と未来を歩む | ナノ




おまえのいない夏休み



何をやってもあいつのようになれない。
何をやってもあいつみたいにできない。

そりゃあ一ヶ月やそこらで何かできるとは思ってなかったけれど、毎日目に見えて上達していく露伴のことを考えるとちょっと、くるしいなと思ってしまう。
おれもなんかできねえかな。
そういえば、もうすぐ夏休み。これは色々ためしてみるちゃんすなんじゃあないだろうか。

「ねえ幸彦、露伴くん呼びに来てるわよ」
『ん?あー、夏休み終わるまではあそばないっていっといて』
だめだ、いごもしょうぎもチェスもまったく分からない。オセロならできっかな……おや、おかあさんがびっくりしたかおでこちらを見ている。
「あら、いつもあの子が誘ったら直ぐに飛び付いてったじゃあないの。ケンカでもしたの?」
『いいや。あのさ、おかあさん』
「何?」

どうせなら、露伴がおどろくぐらいに成長してやろう。






『で、何でりょうりなんかになんだよ』
「なんかとは何よ、なんかとは」
キッチンの台の上にはこども用ほう丁と、色々なざいりょうが置かれている。その一つである玉ねぎを手にとって、おかあさんはじまんげな顔をしてこう言った。
「今は女の人も社会進出、つまり働くことが当たり前に認められる世の中になってるのよ」
『だから何だっつってんの』
「つまり、」
くるりと玉ねぎを手のひらの中で一回転させて、そのままずいっとおれの目の前につき出す。それから今までに見たことの無いようなきれいな笑顔で、

「お母さんそろそろパートの面接行くから、家事手伝いよろしくね?」
『…………
      えええええええええええええええええ!!?!?』
さいしょにおどろいたのはおれだった。












それから毎日料理を教えてもらうはめになって(他の時間は夏休みのしゅくだいをするのでせいいっぱいだった。ちくしょう)、さいしゅう日にはカレーとか酢の物を作れて、ご飯のたき方も分かるようになってしまった。
男としてどうなんだと思ったけれど、少し形が悪くてもおいしいと食べてくれるおとうさんやおかあさんにちょっとうれしくなった。


おれの作った料理を持って、ぴんぽんとおとなりさんのインターホンを鳴らす。しばらくして、がちゃりとドアが開く。
『露伴、ひさしぶりだな』
「幸彦ッキミ今まで『ほらよ、おすそわけ』え」
おどろいた顔で小さいなべを受け取った露伴は、そのままこっちを見てきた。
『おれの自信作。夏休みのあいだずっとりょうりやってたんだ、マズいとは言わせねー』
「あ、ああ………?」
『それじゃあな』
「おいっ ちょっと、待て!」
何か言っていたがむしして、自分の家に転がり込む。
しばらくしてバタンと向こうのとびらが閉まる音がして、素直にあいつが受け取ったことを知る。

とうこうびの日になって、目をそらした露伴に「うまかったぜ」と言われたので、おれのとくぎが決まってうれしいんだか男として情けないんだかフクザツな気持ちになった。




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