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学校は7月を迎えていた。
敦士を最後に見たのが6月。
学校では色々な噂が広がっていた。
重い病を患って療養中だとか、裏社会の揉め事に巻き込まれただとか。
どれも信憑性の無いものばかりだ。
敦士が学校に来なくなってから、生徒会は補佐の御手洗を書記代理に任命した。
御手洗は元々が有能だっただけに、書記の仕事も難なくこなしている。
俺はと言うと、敦士が学校に来なくなってから、何度も敦士の部屋がある生徒会寮に足を運んでいた。
しかし、当然ながら一般生徒は寮の中に入れてもらえない。
実質、面会謝絶状態だ。
勝野に何度も入れて貰えるように頼んだが、やはり駄目だった。
昼休みは、もしかしたら敦士が来るかもしれないと思い、敦士と過ごしたあの裏庭に毎日赴いたが敦士は一度も来なかった。
何らかのアクションがとりたくて、勝野に敦士のメアドなり番号なりを聞こうとしたら、そもそも敦士は携帯を持っていないらしい。
敦士は、やはりあの時の事を気にしている。
俺がどんなにアイツらをボコボコにしても、きっと敦士の傷は一生消えない。
敦士は今も一人で自分の部屋にいるのだろう。
俺は辛い時に側にいてやれない自分が不甲斐なくて悔しかった。
「勝野っ」
俺は今、Aクラスに来ている。
「永井君…」
「敦士の様子は?」
「…分からない。アッちゃん、誰とも会おうとしないんだ。」
予想していた答えが返ってくる。
「…そうか。伝言は伝えてくれたか?」
俺は以前、勝野に敦士への伝言を頼んでいた。
「伝言メモを扉に付属しているポストに入れといたよ。勿論、永井君から伝言があるって言ったけど、聞いていたかどうかは…」
敦士は、俺の伝言メモを見てくれただろうか。
「…そっか。…ありがとな。」
「ううん。本当は永井君を俺らの寮に入れられたら良いんだけど、生徒会の規則なんだ。破ったら罰則の上、生徒会を辞めなければならない。」
勝野がすまなそうに俺に告げる。
「いや、いいんだ。そこまで迷惑掛けられねぇよ。」
そりゃそうだ。ウチの生徒会は厳しい事で有名だからな。
「…あのさ永井君、」
「ん?」
「なんか…痩せた?」
…痩せた?俺が?
「…確かに最近制服がブカブカするけど…」
でも、そんなに言うほど痩せてないだろ?
「そっか…ご飯はちゃんと食べてね。あと、アッちゃんの事は、あまり気にしない方がいい。」
「…あぁ」
勝野の奴、何だって言うのだろう。
確かに最近は食欲が無いけど少し位食べなくたって、どうって事はないだろ。
それに、今の俺には敦士の方が大事だ。
…気にするなって方が無理だろう。
俺はまだこの時、勝野の言っていた意味が分かっていなかった。
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