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「永井〜。お前、昼くらいちゃんと食えよ。今日はお前と一緒に食ってやっから!ほら、俺の焼きそばパン食え!」
山田が焼きそばパンを俺の机の上に置く。
「…俺行かないと。」
そう言って、椅子から立ち上がる俺を山田が俺の腕を掴んで阻止した。
「ちょっ、待てって!お前、最近飯食ってんのか?気づいてないかも知れねーけど、今のお前ガリガリで全然カッコよくねぇぞっ!」
「…離せ。行かないといけないんだ。」
「行くってどこにっ!?」
「…裏庭。」
山田は言わんとしている事を悟ったのか俺の腕を離した。
「…分かった。だけど、俺も行くからな。」
俺は断る気力もなく、山田を連れて裏庭にへと向かった。
◆◇◆
―中庭に到着すると、俺はまず敦士を探す。
しかし、やはり今日も敦士は居なかった。
「永井…。ほら、突っ立ってないで飯食うぞっ飯!」
山田は芝生に座りメロンパンを食いだす。
「いい…、腹空いてないんだ。」
俺は山田に腕を引っ張られ、隣に座り込んだ。
「ほら、焼きそばパン。…黒田に会った時もそんな暗い顔で会うのか?」
「俺…暗い顔してるか?」
自分の顔を触ってみる。
「気づいてなかったのか?最近のお前の顔は死んでんぞ。」
山田がムシャムシャとメロンパンを頬張る。
「無理やりでもいいから何か胃に入れろ。」
俺は山田から貰った焼きそばパンを無理やり口に詰め込む。
「永井…黒田の事より、もう少し自分の事を考えろ。」
「…自分の事なんか考える必要はない。」
「馬鹿野郎っ!!!自分の腕よく見てみろっ!!!」
何で山田はこんなに怒っているんだ…?
…細い。俺の腕ってこんなに細かったっけ?
「俺、さっきお前の腕掴んだ時びっくりしたよ。永井の腕って筋肉ついてて太かったのに、今のお前の腕、骨が浮き出てんぞ?」
「…」
「なぁ、こんなのお前じゃないだろ?永井ってもっとよく笑う奴で、カッコ良い奴だったじゃん。…俺、お前の事憧れてたんだぜ?俺だけじゃない。周りだってそうだ。」
「…カッコ良くなくていい。」
「え?」
「カッコ良くなくていい。これは戒めなんだ。敦士が苦しんでいるのに、俺は自分がのうのうと暮らしている事が許せない。」
「永井…」
「戒めなんだ。敦士が辛い時に、自分の事を考えるなんて…出来るわけがない。」
「…」
「それに敦士がいないんじゃ、カッコ良くたって意味がない。」
そうだ、意味なんてない。
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