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「ちょっと、来いよ。」


チワワに強引に立たせられ、教室から連れ出された。てか、口調が素に戻ってますよ。



俺は泣いた顔を誰かに見られまいと懸命に俯いた。






◇◆◇







…ここは何処だ?


ずっと俯いていたから、チワワに連れて来られた、この埃っぽい場所が何の部屋だか分からない。

資料室だろうか。もう、ずっと使われた形跡がない。


ボケっと辺りを見回していたら、前方にいた猛獣チワワが漸く、深い溜め息と共に振り向いた。


「…で、俺に転ばされたのが、泣くほど痛かったわけ?」


腕を組みながら、苛立たし気に問いかける猛獣に、必死で首を横に振った。再び目が涙目になってしまう。


「じゃあ、何で泣いてたんだよ。てか、何か獅子崎キャラ違くね?」


お前こそキャラ違くね?男口調になってますよ。

俺のキャラって何だし。…皆から恐れられている寡黙な不良って所か?俺からしたらお前の方がよっぽど恐い。折角、化粧をして何故かセーラー服を身を包んでいる美しいチワワは、顔が般若のお面の如く歪んでいた。


「何とか言えよっ、コミュ障か?」

「…ひっ」


チワワが足元にあった空のバケツを蹴り上げ、それは大袈裟な音を立てて床に転がった。

情けない悲鳴が喉から零れ、恐怖からチワワの顔が見れなかった。


「何とか言えよ。俺はお前の事、全然怖くねーぞっ。」


その言葉を皮切りに、チワワの俺への罵詈雑言が次々と発せられた。同時に間合いも徐々に詰められる。

「大体、てめぇムカつくんだよっ!」

「えっ」

「いっつも、でけー態度でクラスに居座りやがってっ!」

「あっ、や、やめっ」

「何様のつもりだ、こらぁっ!」

「ひっ!」

「おらっ、何へたり込んでんだよっ、起きろっ!」

「く、くるじっ」

「勘違いしてんじゃねーぞっ、この腐れ不良がぁっ!俺が気に食わねーんだろ?身の程知らずにはよく分からせねーといけないなぁ。あぁ?何、俺の手叩いてんだ、こら?汚ねーんだよっ、服越しに触れよ糞ったれ!」

「う…うぁ…うぁああ」

「…は?」

「うぁあああ…うっ…うぁあああ」

「え、ちょっタンマ!」

「うぁあああ」

「…うそん。」


情けない声を在られもなく吐露した。猛獣の恐怖に俺は耐えられなかった。








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