(2/3)


アイツの想い人が、おそらく俺であろう事も気にならなかった。

日記のページに滴が落ち、文字のインクが涙で滲んだ。

普段クールな弘前とは思えない内容だった。

俺が弘前の日記を握り締めていると、教室の前方の扉が開いた。


「赤、澤…?」


俺はその人物を見て、慌てて日記を自分の机の中に隠した。


弘前は俺の反応を気にせずに、こちらに近づいて来る。


俺の心臓は有り得ない程、バクバクと音を立てる。胸が壊れそうだ。

弘前は己の机の中や周辺を何やら探している。


「おい、赤澤…」


弘前の切れ長な目が俺を捕らえる。


「何、だよ。」

「…ここら辺でノート見なかったか。」


心なしか弘前の顔色は青い。あまり表情には出さない奴だが、それでも切迫感が漂っている事が分かる。


「し、知らない。」


俺の言葉を聞いて、弘前は目を大きく見開いて、その場に崩れた。


「弘、前。」

「…お前、何で泣いてんの。」


弘前は虚ろな目で俺を見上げた。

俺はたまらずにその場にしゃがんで、弘前を抱き締めた。


「弘前、俺は」

「どうしたんだ…?」

「俺は…お前の事が、好きだ。」

「………は?」

「愛してるんだ。」

「…嘘、だろ…」


多分、俺の言葉は同情から出た言葉だった。それでも、今はこの言葉しかなかった。


「本当だ。」

「…お前、どういう事か分かってんのか?男同士だぞ。」

「分かってる。それでもいい。」


弘前はずっと無表情だったが、俺の言葉を聞いて、僅かに目を滲ませた。


「それでもいいって…そんな簡単な事じゃないんだよ。」


弘前は泣いた。


「男同士なんて非生産的な関係、誰が認めてくれるんだ。世間ではおかしな事なんだよ。それに俺には許嫁がいて、学校出たら結婚しなくちゃいけないんだ。」


まるで、一つ一つ自分の罪を告白しているようだった。


「弘前、頼む。…俺を選んでくれ、頼む。」


俺はというと、涙をポロポロと流しながら弘前に縋っていた。自分でもどうしてこんなに必死なのか分からない。


「弘前が俺を好きなら、俺を選んでくれ。俺はどんな困難もお前と一緒にいたい。」


だから、もう独りで悩まないでくれ。そんな辛い日記は書かないでくれ。


「…弘前」


気がついたら、俺は弘前にキスをしていた。気持ち悪いとは感じなかった。弘前は驚いた顔をしていて、何だか笑えた。


 





戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -