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「ん?何だよ、瀬戸。」
小林君の声に周りの取り巻きも俺に集中した。
小林君よ…。俺にも分からんよ。本当、何やってんだ俺。
「瀬戸…」
高橋も、俺が今この場にいる事に凄く驚いているようだった。
そして、俺は右手をゆっくり差し伸べた。
「高橋。」
おいおい。めちゃくちゃ恥ずいぞ。
小林君達も顔がポカンとしてるし…。
俺は今一体どう見られているんだ?
あ〜…死にたい。
でも、お前が笑ってくれるのなら。
まだ死ねない。
「…うん。」
高橋が俺の手を取った。
その瞬間。
俺は一切何も考えなかった。不安も何も。一切だ。
高橋の手を引いて導いていく。
お前は、何も心配なんかしなくていい。俺が導いてみせるよ。
小林君達や小山や茂雄、クラスメイトが俺らの様子を黙って見ていた。
「ほらぁ、やっぱり友達じゃないっ!」
吉原は俺達を見て、得意気に笑った。
「…おぃっ、こら瀬戸っ!!高橋をどこに連れてくんだよっ!!!」
教室を出ようとした時に小林君の声で立ち止まる。
「…瀬戸っ」
高橋は青い顔で、何とも情けない顔をしていた。
俺よりデカいのに…
しかも札付きの不良なのにな。俺の前ではまるで女の子みたいだ。
まぁ…でも。
相手が怖がっているんだったら、俺はもっと強くなるよ。
お前の為なら、俺は変われる。
「どこだっていいだろ。俺と高橋は友達なんだからさっ」
…本当は恋人だけど。
俺はにっこりと笑って見せた。
そうさ、俺はお前の為なら強くなれる。俺は未だに固まって動かない高橋の手を引いて教室を後にした。
一方、教室はザワザワと喧騒を取り戻す。
「…なぁ、瀬戸ってあんな明るい奴だったか?」
小林は頭を捻って周りに問いかける。
「初めて笑った顔見たよ…俺。」
「笑った方が格好いいよな…」
「…何言ってんの、お前?」
「あっ///」
小林グループの中でも瀬戸が気になり出す者が出てくる事を、本人はまだ知らない。
◆◇◆
「久しぶりだな、屋上は。」
屋上に来たのは、高橋が初めて学校に来た時以来だった。
清々しい景色を前に伸びをしていると、ギュッと後ろから抱き締められる。
「…好き」
デカい身体は俺の肩口に顔を埋めた。
ギュッと更に力が加えられた。
痛い…。
「格好良かった。」
「だろ?」
ゆっくりと振り返ると、高橋は少し骨ばった顔を上げた。
「うん。」
素直に返されると何だか照れくさくて、ハハッと乾いた笑いを洩らした。
「…顔赤いぞ、瀬戸。」
「うっせ。」
高橋の腕を払おうとするが奴の腕はガッチリと、俺を逃そうとしない。
「可愛いっ。」
フフッと、高橋は不良とは似つかない笑い方をする。
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