(2/5)




「ん?何だよ、瀬戸。」


小林君の声に周りの取り巻きも俺に集中した。



小林君よ…。俺にも分からんよ。本当、何やってんだ俺。



「瀬戸…」


高橋も、俺が今この場にいる事に凄く驚いているようだった。



そして、俺は右手をゆっくり差し伸べた。


「高橋。」


おいおい。めちゃくちゃ恥ずいぞ。


小林君達も顔がポカンとしてるし…。


俺は今一体どう見られているんだ?




あ〜…死にたい。



でも、お前が笑ってくれるのなら。



まだ死ねない。



「…うん。」



高橋が俺の手を取った。



その瞬間。



俺は一切何も考えなかった。不安も何も。一切だ。


高橋の手を引いて導いていく。

お前は、何も心配なんかしなくていい。俺が導いてみせるよ。


小林君達や小山や茂雄、クラスメイトが俺らの様子を黙って見ていた。


「ほらぁ、やっぱり友達じゃないっ!」


吉原は俺達を見て、得意気に笑った。


「…おぃっ、こら瀬戸っ!!高橋をどこに連れてくんだよっ!!!」


教室を出ようとした時に小林君の声で立ち止まる。


「…瀬戸っ」


高橋は青い顔で、何とも情けない顔をしていた。


俺よりデカいのに…

しかも札付きの不良なのにな。俺の前ではまるで女の子みたいだ。



まぁ…でも。


相手が怖がっているんだったら、俺はもっと強くなるよ。

お前の為なら、俺は変われる。


「どこだっていいだろ。俺と高橋は友達なんだからさっ」


…本当は恋人だけど。


俺はにっこりと笑って見せた。

そうさ、俺はお前の為なら強くなれる。俺は未だに固まって動かない高橋の手を引いて教室を後にした。






一方、教室はザワザワと喧騒を取り戻す。


「…なぁ、瀬戸ってあんな明るい奴だったか?」


小林は頭を捻って周りに問いかける。


「初めて笑った顔見たよ…俺。」

「笑った方が格好いいよな…」

「…何言ってんの、お前?」

「あっ///」


小林グループの中でも瀬戸が気になり出す者が出てくる事を、本人はまだ知らない。












◆◇◆









「久しぶりだな、屋上は。」


屋上に来たのは、高橋が初めて学校に来た時以来だった。


清々しい景色を前に伸びをしていると、ギュッと後ろから抱き締められる。


「…好き」


デカい身体は俺の肩口に顔を埋めた。


ギュッと更に力が加えられた。

痛い…。



「格好良かった。」

「だろ?」


ゆっくりと振り返ると、高橋は少し骨ばった顔を上げた。


「うん。」


素直に返されると何だか照れくさくて、ハハッと乾いた笑いを洩らした。



「…顔赤いぞ、瀬戸。」

「うっせ。」


高橋の腕を払おうとするが奴の腕はガッチリと、俺を逃そうとしない。


「可愛いっ。」


フフッと、高橋は不良とは似つかない笑い方をする。



 





戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -