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学校の裏まで来ると、酒井君は俺に向き直った。
「さてと…瀬戸君。そろそろ返事を聞かせて貰いたいんだけど。」
「返事…って何の?」
すると、酒井君の端正な顔がみるみる内に歪んでいった。
「勿論、告白の返事だよ。」
「告白…あ。」
思い出した。俺、酒井君に告られたんだっけ。
「まさか、忘れてたの…?」
「いや、まぁ。その…」
あの時は他の事で頭が一杯だった。
「…酒井君はホモなの?」
「…今更?というか、瀬戸君がそういう事言うの?」
…なんか酒井君ってこんなにキツい感じだったっけ?
「…俺はホモじゃねぇよ。」
「じゃあ、高橋君とはどうなの?」
「それは…」
「あー…ごめん。本当はそんな事を聞きたいんじゃないんだ。…俺は君が好きなんだよ。入学した時からずっと。一目惚れなんだ。」
酒井君は頭を抱えて眉間に皺を寄せた。
「…ごめん。どうやっても俺は酒井君の気持ちには答えられない。」
「…高橋君が好きなの?」
「…好きだよ。」
酒井君の目は悲しげで、その目を見ていたら俺まで悲しくなってしまった。
暫く沈黙が続いた。
時が止まった、と言った方が近いかもしれない。
「酒井君。」
酒井君は俯きがちになった顔をあげた。
「こんな俺を…好きになってくれて、ありがとう。」
「…」
「嬉しかった。」
「瀬戸君…それは残酷だよ。」
酒井君は切なげにそう言うと、静かに歩き出し、急にピタッと立ち止まった。
「…高橋君のどこがよかったんだい?」
俺は少し考えてから「可愛い所」と答えると、酒井君は大笑いをしてその場を去っていった。
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