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授業が始まるまでの談話時間。
いつものように小林グループの所へ向かおうとする高橋の腕を掴む。
高橋は俺の普段らしからぬ行動に少し戸惑う。
「…なに。」
「何じゃねぇ。」
「じゃあ、何なんだよっ!!」
高橋の声が思ったより教室に響いた。
こちらを伺っている生徒がチラホラと目立つ。
「…ちょっと来い。」
そう言って、俺は高橋を教室の外へ連れ出した。
◆◇◆
フラフラと高橋を連れて歩いていると、次の授業のチャイムが鳴った。
俺は教師に見つからないように、たまたま見つけた、訳の分からない小さな扉のついた部屋に高橋を連れて入った。
そこは狭い物置部屋だった。辛うじて電気はつく。
様々な行事で使われていた物が散乱している。
「…嘘つき。」
部屋に入ってすぐに高橋が口を開く。
「…好きだって言ったくせにっ!!」
高橋が俺の胸ぐらをグッと掴む。
「お、ぃ…っ」
「あの夜だって、俺にやらしい事いっぱいしたくせにっ!!!」
「ちょっ、苦しいって…」
「…したくせにっっ!!!」
俺は苦しさのあまり、高橋の鳩尾に膝を入れた。
高橋はガハッと咳き込み、俺から手を離してそのまま倒れた。
ゼェゼェと肩で呼吸をする。
「はぁ…落ち、着けよ。」
「ハッ…畜生っ…」
高橋はギュッと目を瞑ると、ボロボロと泣いた。
「おぃ、泣くなっ!!」
俺は慌てて高橋の前に屈み込む。
「…うっ」
高橋は依然と涙を流すばかり。
「ばっ、勘違いすんなっ!!俺はお前の事が好きだっ!!」
俺は高橋の涙を指で拭っても、次から次へと溢れ出してくる。
「…でも付き合ってないんだろ!?俺たちは!?」
高橋は赤く充血した目で俺を睨む。
「じゃあ、付き合おう!!!今から、な?」
俺は精一杯の誠意を言葉に込めてみる。
その言葉を聞いて、高橋は俺に強く抱きついてきた。
…重い。
「…酒井とは…どうなんだよっ」
「別に何も。」
「…浮気すんなよ。」
「しねーよっ」
俺は高橋の目をペロっと舐めた。
涙の味がしょっぱかった。
俺は高橋の体をスルスルと撫でる。
「…何すんだよっ」
「いや、やらしい事しようかなぁ、なんて。」
俺は高橋の顔中にキスを降らす。
「…学校じゃ、やだ」
「…ダメか?」
俺が高橋を見つめて言う。
高橋は百面相をした後、顔を赤くしてボソッと答える。
「…ちょっとだけなら。」
「わかった。」
そう言って、俺は高橋に優しく微笑み、唇に深い口づけをした。
1時間後、高橋は自慢のオールバックを乱して教室に戻って来る
のであった。
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