小さな波乱




それは、お昼休みの事だった。


「瀬戸君。」

「あ、酒井君。」


酒井君が俺の席まで歩み寄る。


「お昼、一緒に食べようよ。」


酒井君がお決まりの王子スマイルを浮かべる。


「あぁ、いいよ。」


俺は小山と木村茂雄と食べていた。

茂雄は俺の幼なじみだ。


「…出来れば二人きりがいいんだけど。」

「…あぁ、そう?」


俺は茂雄と小山に事情を話して、コンビニ袋をひっつかむ。


「どこで食うの?」

「学校の裏へ行こう。聞かれちゃマズい話とかあるし。」


聞かれちゃマズい話…?


俺が頭を捻ってると、前方から歩いてきた高橋と鉢合う。


「よぅ、高橋。」


俺は足を止める。


前を歩いていた酒井君もそれに気付いて立ち止まった。


「…何で酒井と一緒にいんだぁ?」


高橋は俺を訝しげに見つめた。


「これから酒井君と飯行く。」


俺は淡々と答える。


高橋は今度は酒井君を見る。



「…気に入らねぇなぁ。」


高橋は酒井君に向き直り、いきなりメンチを切り出した。

しかし、酒井君は全く怯む事なく堂々としている。


「よぉ、酒井。瀬戸に何の用だよ?」

「高橋君には関係だろ。」


端から見たら、柄の悪い不良がイケメン優等生に絡んでる様に見える。


「関係大ありなんだよ、コラぁっ。人のに手ぇ出してんじゃねぇぞっ」


高橋は、酒井君の胸ぐらをグィっと掴んだ。

それをパシッと酒井君は振り払う。


「…何で瀬戸君がお前のなんだよっ。」

「てめぇが瀬戸の事が好きだって事位、一目瞭然なんだよっ。だけど、瀬戸はもう俺と付き合ってんだよっ」

「えっ、そうなの瀬戸君っ」


酒井君が俺に振り返る。


「え、何が?」

「高橋君と付き合ってるって!?」

「えっ、…そうなの?」


俺が高橋に聞くと、高橋は石の様に固まった。

そして、重い口を開いた。


「そうなのって…お前、あの時、俺のこと好きって言ってたじゃねーかっ…」

「え、じゃあ付き合ってるの…俺たち?」


高橋は俺を見て、信じられないという顔をしている。


「し、信じらんねーお前っ!!!じゃなかったら何だっていうんだよっ!!」


高橋は今度は俺に詰め寄る。


怒りで顔を真っ赤にして戦慄く。


「…どうやら高橋君の勘違いのようだったね。」


酒井君は容赦ない言葉を高橋に浴びせた。


「行こうか、瀬戸君。」


「…瀬戸っ」


高橋を見ると、何とも情けない顔をしていた。


「…大丈夫。」


俺は高橋に確かにそう告げて、酒井君に連れられて行った。








戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -