(2/3)
只今、帰宅中。
帰宅部の俺は、活動を全うする。
そして今俺は、コンクリの上の蟻の行列を見つめていた。
お前らは地面を目指して進んでいるのに。
俺には目指す道が無い。
よって、進むことも退ることも出来ない。
俺はどこにも行けない。
「瀬戸。」
前方から声を掛けられ顔を上げる。
「…高橋。」
「何、蟻なんて見てるんだ?」
しまった、根暗な所を見られてしまった。
「…何でここにいんの?」
「お前を待ってたんだよ。」
「何で?」
「何でって…何だっていいだろ。」
何だっていいだろ。
何だっていいだろ。
何だっていいだろ。
…何だっていい訳ないじゃないか。
何かがあるから俺を待ってたんだろ。
…高橋もヒス女も意味が分からん。
何かを隠しているんだ、きっと。
隠すのは勝手だ。だが、隠された方は気分良くない。
俺の気分は急降下。
「…今日さ、俺ん家来ないか?」
「勝手だな。」
「え?」
「勝手だっつってんだよ。どいつもこいつも…何かあるなら言えばいいんだ。」
高橋は俺の言い様から不機嫌な事が分かったらしい。
「…どうしたんだ?」
「お前は俺に何を隠してんだよっ!!」
俺は高橋の胸を指で乱暴に突いた。
「…隠してる?」
「そうだ。お前らの秘密だよ。それが俺をこんなに苛立たせるんだっ」
「落ち着けよ…。秘密って…前にも言ったけど、人には言えねぇ秘密ってのもあるんだよ。」
「俺にはねーんだよっ!!んなもんっ!!何にもねぇんだよっ!!」
「瀬戸…」
高橋はどうしていいのか分からずに立ち尽くす。
「いいよな、お前らはっ」
色んなもんがあって。
…だから、隠し事なんかが出来るんだ。
俺は高橋の横を通り過ぎようとした。
「瀬戸っ」
「触んじゃねーよっっ!!」
高橋に肩を掴まれたから。
反射で、振り払うように高橋の頬を殴ってしまった。
気付いた時にはもう遅かった。
いくら高橋だからと言って、ヤンキーの頬殴ってしまった。
殺されるかもしれない、と思った。
だけど、目の前の高橋はただ一筋の涙を流すだけだった。
ギョッとした。
まさか泣くとは、天地がひっくり返っても思わなかった。
「何で怒ってるんだよ…」
高橋はポロポロと涙を零す。
「俺はただ…お前を俺ん家に誘おうと思って、ここで待ってたんだ。」
「…」
「お袋、いつも帰り遅いから。お前に一緒に居て欲しかったんだ。」
「…高橋。」
「恥ずかしいだろ、寂しいから一緒に居てくれなんて言うの。」
今日は俺、泣かしてばっかだ…。
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