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只今、帰宅中。

帰宅部の俺は、活動を全うする。




そして今俺は、コンクリの上の蟻の行列を見つめていた。







お前らは地面を目指して進んでいるのに。

俺には目指す道が無い。


よって、進むことも退ることも出来ない。



俺はどこにも行けない。



「瀬戸。」


前方から声を掛けられ顔を上げる。


「…高橋。」

「何、蟻なんて見てるんだ?」


しまった、根暗な所を見られてしまった。


「…何でここにいんの?」

「お前を待ってたんだよ。」

「何で?」

「何でって…何だっていいだろ。」




何だっていいだろ。

何だっていいだろ。

何だっていいだろ。






…何だっていい訳ないじゃないか。


何かがあるから俺を待ってたんだろ。





…高橋もヒス女も意味が分からん。


何かを隠しているんだ、きっと。




隠すのは勝手だ。だが、隠された方は気分良くない。



俺の気分は急降下。



「…今日さ、俺ん家来ないか?」

「勝手だな。」

「え?」

「勝手だっつってんだよ。どいつもこいつも…何かあるなら言えばいいんだ。」


高橋は俺の言い様から不機嫌な事が分かったらしい。


「…どうしたんだ?」

「お前は俺に何を隠してんだよっ!!」


俺は高橋の胸を指で乱暴に突いた。


「…隠してる?」

「そうだ。お前らの秘密だよ。それが俺をこんなに苛立たせるんだっ」


「落ち着けよ…。秘密って…前にも言ったけど、人には言えねぇ秘密ってのもあるんだよ。」

「俺にはねーんだよっ!!んなもんっ!!何にもねぇんだよっ!!」

「瀬戸…」


高橋はどうしていいのか分からずに立ち尽くす。


「いいよな、お前らはっ」


色んなもんがあって。


…だから、隠し事なんかが出来るんだ。


俺は高橋の横を通り過ぎようとした。


「瀬戸っ」

「触んじゃねーよっっ!!」


高橋に肩を掴まれたから。


反射で、振り払うように高橋の頬を殴ってしまった。


気付いた時にはもう遅かった。


いくら高橋だからと言って、ヤンキーの頬殴ってしまった。



殺されるかもしれない、と思った。





だけど、目の前の高橋はただ一筋の涙を流すだけだった。




ギョッとした。


まさか泣くとは、天地がひっくり返っても思わなかった。




「何で怒ってるんだよ…」




高橋はポロポロと涙を零す。


「俺はただ…お前を俺ん家に誘おうと思って、ここで待ってたんだ。」

「…」

「お袋、いつも帰り遅いから。お前に一緒に居て欲しかったんだ。」

「…高橋。」

「恥ずかしいだろ、寂しいから一緒に居てくれなんて言うの。」


今日は俺、泣かしてばっかだ…。


 





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