蟻と涙




今日も今日とて小林軍団は賑やかだ。

確かに高橋パワーは大きいかも知れない。



俺は俺でヒス女に絡まれながらも今日も今日とて日陰で過ごす。

刺激的な日ってのは毎日は続かない。


しかし、俺は不思議と満足している。


「瀬戸、アンタさっきの授業中居眠りしてたでしょっ」


俺の不機嫌の元がやって来た。


「…お前は何でいつも俺の所に来るんだよ。」

「何よー、その態度っ」


ヒス女は俺の机に当たり前のように座る。


「毎回俺の机に座るのも止めろよ。」

「いいじゃないっ、小さい男ねっ!…それより聞いてよ。」


ヒス女は勝手にしゃべり続ける。


「私、高橋君に嫌われてるみたい。」

「…」

「ちょっと、聞いてる?」


はっきり言って…お前が高橋に好かれよーが嫌われよーが、俺にはどーでもいいんだよっ。


「私が瀬戸の所に行くとね、すっごい目で睨まれるの。…ほら、今も。」


見て見て、とヒス女に促されるから仕方なく目を斜め前方にいる小林軍団に移す。


高橋が確かにこちらを見ていた。


「…高橋は元々目つきが悪いんだよ。」

「違うの!本当に睨まれてるんだって!…ねぇ、何とかしてよっ」

「は?何で俺が?」


何で俺がヒス女の為に?意味分からん。


「アンタ、高橋君の友達でしょっ」

「どこをどう見たらそうなるんだ?」

「私がアンタと接触する度に睨まれるのよ!?」

「だったら、お前が俺に構わなければいいだろが。」


そう言うと、今まで喚いていたヒス女がピシッと固まってしまった。


「…ひどい。」


ヒス女はポツりと呟いた。


何故か周りにいた女子どもが憤慨し出した。


「瀬戸、最っ低。」

「信じらんないっ!!」

「この冷血男っ!!」

「アンタには女心が分かんないのっ!?」



…何で俺が責められてんだ?



「瀬戸、お前本気で気づいてねーの?」


俺の隣で漫画を読んでいた小山が呆れた物言いで言う。


「知らねーよ、俺に言うな。」


そう言うと、ついにヒス女が声を上げて泣いた。






…俺が悪いのか?


ヒス女が何でか知らんが泣いてしまった。


周りの女子からの視線が痛い。


「…おぃ、泣くな。」


ヒス女は一向に泣き止まない。


「…泣けばいいと思ってたら大間違っ」


バコッと他の女子に頭を叩かれた。


「ってーなっ!!何すんだこのアマぁっ!!!」

「…今のはお前が悪い。いいから素直に謝っとけって。」


小山が横から口を出す。


チッ、めんどくせぇ…ヒス女めっ


「…悪かった。」


ヒス女は泣いていた顔を上げる。


「高橋君にもちゃんと言っといてよね。」

「ハイハイ。」


周りの女子にキッと睨まれる。


「あと、…もうあんな事言わないで。」

「…あぁ。」


その言葉を聞くとヒス女は笑顔で俺の席から離れていった。


さっきまで泣いてたくせに。


「なぁ、小山。」

「うん?」

「俺、なんか可哀想じゃね?」

「…ちょっとな。」

「あ、その漫画読み終わったら俺にも見して。」








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