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昼休みも終わり、残り最後の授業となった。
「瀬戸。」
今日初めて、高橋君から声を掛けられた。
「…な、に?」
「ちょっと、いいか。」
そのまま高橋君は廊下を出た。
俺は無視することも出来ずに高橋君の後をついていく。
暫く廊下を歩いて、高橋君は屋上に続く階段を上り始める。
…何だってんだ?ずっと無言だし。
高橋君は屋上に掛かってる鍵を持っていた鍵で開ける。
何で、んなもん持ってんだ?
高橋君は俺の視線に気づくと、「小林に借りた」とだけ言った。
屋上の扉を開けると風が勢いよく、こちらに向かって吹いてきた。
それは、まるで空を飛んでいるような感じだった。
高橋君に手を引っ張られて、屋上に出る。
屋上は広かった。誰もいない。
ガラーンとしている。
今いるのは高橋君と俺だけ。
俺は初めての体験に不思議とワクワクしていた。
何だここは。別世界か?
学校の中に別世界がある。
「いいな、屋上も。」
「…あぁ。」
俺はいつも眠たげで重い目蓋を一杯に見開いた。
目の前に広がる景色。
俺たちの町だ。ド田舎な俺たちの。
今度は目をつぶって両手を広げてみた。
初めて風を感じた気がした。
刺激だ。あの時とは違うけど、ここには刺激がある。
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