秘密の友達
…あれ?何かいる。
彼は学校に来ていた。
周りも彼についてヒソヒソと噂している。
彼は机に突っ伏して寝ているようだ。
声を掛けるのも不粋な気がして、俺はそのまま席に着いた。
「瀬戸、アンタ何かしたの?」
俺が席に着くや否や、ヒス女が近づいて来た。
「…別に何も。」
「ふーん。…あ、」
「おはよ」とヒス女は俺に言って、女子のグループに戻っていく。
遠くの方で何やら女子がヒス女を囲んでキャーキャーと騒いでいる。
後ろを振り返り彼を見る。
彼が学校に来た。
何でかは知らないけど。
俺はあの刺激を思い出した。
…期待しちゃいけない。俺は凡人なんだ。凡人は普通に生きていかねば。
俺は再び前を向く。
朝のHRが始まって、一時間目が始まるまでの間。
背中に降り注ぐ視線が痛かった。
…何だ、何か用か?
俺は後ろを振り向くと、彼とバッチリ目があった。
「あ。」
彼は何だか恥ずかしそうに目線を下方にずらす。
…何もしゃべんないのかよ。
俺はまた前を向く。
周りは皆、高橋君に注目している。
誰も彼に話し掛けにいかない中、小林軍団が彼に近づいていった。
…まぁ、妥当だな。不良は不良同士仲良くってね。
俺の後ろで彼らは親交を深めていった。
◆◇◆
休み時間ごとに彼らはどうやら打ち解けていったようだ。
今も教室の斜め前方で何が面白いのか彼らは爆笑している。
「おい、何だかあそこだけすげぇ空気だな。」
友人の小山が俺の前の空いた席に座って話しかける。
「あぁ。…見ろよ、いつも賑やかな東君たちが静かだ。」
俺は顎をやって東君たちの方を指す。
「うわ、本当だ。何か、高橋が加わってから小林軍団の勢いが増したな。」
「ちょっと瀬戸、アイツらどうにかしてよっ!うるさくて酒井君の声が全く聞こえないわ。」
いつの間にか、ヒス女が俺の机に座って話しかけて来た。
「…何で俺なんだよ。」
「高橋君と友達でしょ?」
「ちげーよっ」
「だって…ほら今も高橋君、アンタの事見てるし。」
俺は小林軍団に目を向けると高橋君と目があった。
「…いや、知らねーから。俺に頼むな。」
「何よ、冷たい男。」
「うるせー、ヒス女。」
ヒス女は機嫌を損ねて、俺の席から離れていった。
ヒス女のせいで俺まで気分が悪くなった。
「吉原って、プライド高そうだよなぁ」
「誰それ?」
「え、」
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