(3/3)




「いい顔してる。」


高橋君は俺を見て楽しげに笑った。


「どうして俺をここに?」

「…瀬戸と来たかったんだ。」


ちょうど始業のチャイムが鳴り始めた。


「…あ、始まった。」

「もう、フけちまおうぜ。」


そう言って、高橋君はゴロりと横になる。


「…いいのか?」

「つまらないんだろ?学校。」


俺は高橋君の横に腰掛ける。


「…俺たちは今、秘密を共有してるんだ。」

「…」

「秘密の友達だ。」


高橋君は見た目の割に、やけに幼な気に笑った。


「…秘密は無いんじゃなかったのか?」


俺は高橋君の昨日の言葉を思い出す。


「…あれは嘘だ。人には誰しも言えない秘密ってのがある。」

「高橋君にも?」

「…ある。瀬戸にだってあるだろ?」

「…いや、ない。」


高橋君が顔を俺に向ける。




「何もないのか?」

「何もない。」

「…羨ましい奴だ。」


…違う、そうじゃない。本当に何もないのだ。俺には何もない。


「だけど、お前も今日から秘密持ちだな。」


俺が黙ってると、高橋君は言葉を続けていく。


「秘密の友達はな、秘密の事をするんだ。」

「秘密の事?」

「あぁ、だから今日の事も秘密。」



そう言って、高橋君はポケットからタバコを取り出した。


おもむろに一本くわえて火をつける。


タバコを吸うと、俺の口の前にそれを持っていく。





…まただ。


俺はタバコのフィルターをじっと見つめる。


唾液で少しテカっている。



俺が中々タバコをくわえない事に痺れを切らし、高橋君はタバコを俺の唇に付けた。





俺は…いけない事を、している気がする。


分かっていても、俺は口を開いてタバコをくわえる。


タバコのフィルターに高橋君の唾液の感触がした。



いけない事を…



「…これも秘密な。」


高橋君は俺の唇辺りを指の腹で触れた。






…そうだ、秘密だ。


このほろ苦い味も、刺激も。

胸の高揚感も。居心地の悪さも。

全部、秘密にしてしまえばいい。


高橋君は俺の口からタバコを抜き取ると、それをくわえた。




…秘密にしてしまえばいい。




俺はゴロりと高橋君の隣に横になる。


「…あと、高橋君はやめてくれ。」

「何で?」

「何か、気持ち悪い。」

「…」

「…聞いてるか?」

「聞いてるよ、高橋。」


俺がそう言うと、高橋は嬉しそうに笑う。

こんなにガタイもよくて、厳つい髪型と顔をしているのに。





………女の子みたいだ。




そんな事言ったらきっと俺は殴られるだろうから秘密にしておく。








戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -