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「お前なぁ、まだ半月もあるんだぞっ!?そんなモンばっか食ってたらいつか体壊すだろがっ!!」

「…うるっせーなぁ、俺のことはほっとけよ。」


冷たく言い放つと、「ほっとけるかよ…」と小声が聞こえた。


奈良崎はまだここから立ち去ろうとしない。


「…〜っだぁーーっっ!!しつけーなぁっ!!金が無ーの、分かるかっ!?お前らと違って庶民の俺は後先考えずに食堂で馬鹿食いした結果が…ハンッ!コレだよっ…分かったら、とっとと立ち去れ。」


息も絶え絶えに言い放つと、奈良崎は頭を抱えた。


そして、


「…もっ、馬鹿っ!!」


と一言。


極悪な不良に似合わない台詞に、思わずキュンと心臓が締め付けられた事は秘密だ。


「なっちまった事は仕方ねーだろっ」

「………俺が作る。」

「は?」

「朝、昼、晩。俺が作る。」




…何を言ってんだ、この不良君は。




「そんなモンばっか食ってる姿見てっと、こっちまで体壊しそーな気になるんだよっ。……つっても、食堂で毎日奢る訳にはいかねーから自炊する。昼は弁当な。」

「…はぁ。」


まだ俺の頭は話についていけていない。



「とりあえず、今月までだ。…お前がその先も作って欲しいっつーなら、作ってやるよ。」


…コイツは何で俺の為にここまで考えてるんだろ。


同室者だからか?俺がした事忘れてんのか?


何でかは知らないが、次第に胸に温かいものが込み上げてくる。







「奈良崎」

「何…って、うわっっ!?」


俺は勢いよく立ち上がり、立っていた奈良崎を抱きしめた。


まぁ、俺の方が身長がだいぶ低いから、俺の頭は奈良崎の胸の位置に来るわけだが。


端から見たら、大木に張り付いているセミのよう…自分で思ってて虚しーな。



「…ありがと。」


俺に抱きつかれている奴は明らかに動揺していた。


確かに、俺が奈良崎ごときにこんな優しい言葉をかける事はまず有り得ない。

そう、有り得ない!

有り得ない事をしている俺も有り得ない。



奈良崎はというと行き場のない腕をおずおずと俺の背中に回してきた。



暫くそうしていると俺の頬に突如、柔らかいモノが降って来る。


チュッ…



驚いて顔を上げると、奈良崎が赤い顔で力無く笑っていた。


「…買い物…行ってくるな。」


そう言って奈良崎は俺から離れ、玄関を飛び出して行った。












ドクドクドクドク…



心臓が早鐘を打っている。



顔が熱い。



「…困ったな。」



俺はその場にのろのろとしゃがみ込んで、頭を抱えた。



 





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