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【奈良崎視点】


ヤバい…っ、キスしちゃった…。


思わず飛び出したけど、帰ったらどんな顔で会えばいいんだ?


だって、アイツが初めて俺にあんなに…あんなに優しくした。


初めてだ。


なのに、それだけでも珍しい事なのに、


「…反則だろっ」


あの言葉はヤバい。


顔が熱い。


周囲の奴らが物珍しそうに俺を凝視していた。


ギロッと睨みつけてやると、青い顔で即座に顔を逸らされる。


「…はぁ」


アイツ何食べるかな…とりあえず野菜を多めに取らせないと。


スーパーを目の前にして、また溜め息が零れた。





◆◇◆





「おっ、進藤今日弁当か!」

「わっ、愛妻弁当っ!?」

「…〜っ!!蘇我ぁ、犯されてーのかぁあ”っ!?」

「キャ〜っ!…って顔、真っ赤だし進藤。」


俺はもう何も言わん。


これは、俺が朝出るときに、奈良崎に持たされたヤツだ。

その奈良崎お手製の弁当をもそもそと食べる。


「てか、その弁当…何か愛を感じるよなぁ〜。全部手作りじゃん!」

「…純くん、黙って。」


と、言いながらタコウィンナーを奥歯で噛み締める。


公開処刑だろ…。



「…純、圭吾。もう行こうぜ食堂に。昼休みが無くなる。」


さっきから俺の弁当をスルーで、一言も喋っていなかった西田。


「は?進藤置いてくのかよ。なぁ進藤、弁当持って行って一緒に食堂で食おうぜ?」


無理無理無理っ、こんな恥ずかしーモン食堂で食えっかよっ!


…なんか俺、母親が作った弁当を恥ずかしがる思春期の男子みてーだな。


「俺はいーから…皆で行ってこいよ。」

「でも…」

「西やんと純で行ってきなよ!俺、買弁だからさ〜」


蘇我は暑苦しいのに爽やかな顔で笑った。


「…じゃあ、行ってくるよ。」


そんな寂しー顔するなよ、純くん…。

西田なんかスタコラ歩いて行ってしまっている。あの野郎。


蘇我と一緒に飯を食っていると、横からニュッと顔が出てきた。


「進藤君…」

「おわっ」

「よぉ、橋本〜っ」


「やぁ、蘇我くん」と、眼鏡がニュルリと俺達の横に椅子を持ってきて座った。



てか、心臓飛び出るかと思った…。

軽くホラーだ。


「俺、橋本 満(ハシモト ミチル)って言うんだ。…ちょっと話とか聞かせて貰ってもいいかな?」


眼鏡…もとい橋本はそう言って、ポケットから小さなノートとペンを取り出した。


 





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