(3/6)
【奈良崎視点】
ヤバい…っ、キスしちゃった…。
思わず飛び出したけど、帰ったらどんな顔で会えばいいんだ?
だって、アイツが初めて俺にあんなに…あんなに優しくした。
初めてだ。
なのに、それだけでも珍しい事なのに、
「…反則だろっ」
あの言葉はヤバい。
顔が熱い。
周囲の奴らが物珍しそうに俺を凝視していた。
ギロッと睨みつけてやると、青い顔で即座に顔を逸らされる。
「…はぁ」
アイツ何食べるかな…とりあえず野菜を多めに取らせないと。
スーパーを目の前にして、また溜め息が零れた。
◆◇◆
「おっ、進藤今日弁当か!」
「わっ、愛妻弁当っ!?」
「…〜っ!!蘇我ぁ、犯されてーのかぁあ”っ!?」
「キャ〜っ!…って顔、真っ赤だし進藤。」
俺はもう何も言わん。
これは、俺が朝出るときに、奈良崎に持たされたヤツだ。
その奈良崎お手製の弁当をもそもそと食べる。
「てか、その弁当…何か愛を感じるよなぁ〜。全部手作りじゃん!」
「…純くん、黙って。」
と、言いながらタコウィンナーを奥歯で噛み締める。
公開処刑だろ…。
「…純、圭吾。もう行こうぜ食堂に。昼休みが無くなる。」
さっきから俺の弁当をスルーで、一言も喋っていなかった西田。
「は?進藤置いてくのかよ。なぁ進藤、弁当持って行って一緒に食堂で食おうぜ?」
無理無理無理っ、こんな恥ずかしーモン食堂で食えっかよっ!
…なんか俺、母親が作った弁当を恥ずかしがる思春期の男子みてーだな。
「俺はいーから…皆で行ってこいよ。」
「でも…」
「西やんと純で行ってきなよ!俺、買弁だからさ〜」
蘇我は暑苦しいのに爽やかな顔で笑った。
「…じゃあ、行ってくるよ。」
そんな寂しー顔するなよ、純くん…。
西田なんかスタコラ歩いて行ってしまっている。あの野郎。
蘇我と一緒に飯を食っていると、横からニュッと顔が出てきた。
「進藤君…」
「おわっ」
「よぉ、橋本〜っ」
「やぁ、蘇我くん」と、眼鏡がニュルリと俺達の横に椅子を持ってきて座った。
てか、心臓飛び出るかと思った…。
軽くホラーだ。
「俺、橋本 満(ハシモト ミチル)って言うんだ。…ちょっと話とか聞かせて貰ってもいいかな?」
眼鏡…もとい橋本はそう言って、ポケットから小さなノートとペンを取り出した。
← →
戻る