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俺は以前、張り手をかました部長の頬に手を伸ばす。
「ぅん…大丈夫…」
俺の手が触れると部長は目線を下げ、顔に熱を集める。
「あ、ほらっ!他の1年生来たみたいだよっ」
部長は何かをごまかすように俺の肩をポンポンと叩いた。
「本当だ。案外早かったな…ありがとな、部長。」
俺はそう言って席を立つ。
「…あ、あのさっ」
部長の声に俺は振り向く。
「何」
「あ…その、…話したい事があるんだっ。今日、HR後って暇かな?」
「…うん、まぁ。」
「じゃあ、HR後に体育倉庫の前で待ってるから。来てくれないか?」
「いいよ。」
「ありがとう。」
「じゃあ、俺行くな。」
部長の優しい微笑みに見送られながら、俺は何事もなかったかのように1年の列へと入っていった。
入学式の間はとにかく眠くて、校長のありがたいお話が念仏に聞こえた。
俺がコクコクと眠って起きてを繰り返し、横の席の奴の肩を少々借りていると、後ろの席だった西田に小突かれる。
自分の席に浅く座って眠る方法を編み出し、スヤスヤと眠っていたら、突如起こった黄土色の大きな歓声に目を覚ました。
「うるせぇ…」
何となく、3年の席の部長に目を向ける。
部長はきちんと綺麗に着席していて、周りの3年と違って真面目に話を聞いていた。
横から見ると睫毛が濃く長い。
睫毛を伏せたりした顔なんて色気があって凄く綺麗だ。
「…てか、皆何で騒いでんだ?」
「生徒会の挨拶が始まったんだよ。」
俺の無意識の独り言に横から反応が返ってきた。
横を見やると、そこには爽やかに笑っているのに妙に暑苦しい奴がいた。
「…アイドルのコンサートみてーだ。」
あ、生徒会長だ。
今日も恐えーけどカッケーな。
あんなに厳ついのに、凄く優しいんだよな…。
俺たちがまた話せる日は来るのだろうか。
もしかしたら、先輩は俺の事忘れてるかもな。
「ここの生徒会はアイドル並に人気が高いからな。君、さっき教室にいなかった進藤だろ?俺は蘇我 圭吾(ソガ ケイゴ)。宜しく。」
なんか、こいつサッカー部っぽいな。脚とか結構太いし。
「俺、進藤 要。宜しく、蘇我。」
蘇我は筋肉質な体を丸めて照れたように笑っていた。
「なぁ、サッカーとかやってた?」
俺が何となく言った言葉に蘇我は目を丸くした。
「…よく分かったなぁ。俺、この学園の初等部からサッカーずっとやってたんだ。」
「へぇ、初等部からここにいたんだ。」
「あぁ。だから俺、すっかりホモになっちゃった。」
蘇我は顔を桃色に染めて緩く笑った。
俺はというと、直球な蘇我の言葉に一瞬固まったが次の瞬間爆笑してしまった。
俺の笑い声は周りの歓声に紛れた。
「いーねっ!その直球な感じがいいよ。」
「進藤は?見た感じノンケっぽいけど。」
「俺は女が好きだ。でも、幼なじみは皆染まっていくって言ってた。」
俺は葉子の恐ろしい予言を思い出すと、心臓が縮んだ気がした。
「あぁ…それはあるかも。俺の周りにいたノーマルな奴も皆こっちに来たからね。」
「…恐ろしーな。」
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