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※十年後設定
※以前のre!リメイク作品






「別れよう、俺達」

彼から突然告げられた言葉はまさに青天の霹靂。
私の左手には昨日武がくれた指輪がキラキラと輝いてる。柄にも無くバラなんか買っちゃって、幸せにするからってはにかむ武が愛しくて、嬉しくて泣いたのは彼に告白された時以来だった。

「なんで、待って、別れるって何?だって昨日、」

声が擦れて上手く喋れない。
だって昨日は二人で笑いあって、抱きあって、朝まで一緒にいたでしょ?
武が私を幸せにするって言ったから、じゃあ私もって。約束したのはたった数時間前だよ。

「…気が変わった。別れてくれよ夢子。お前なら俺とじゃなくても幸せになれるだろ」

「冗談やめてよ、笑えない」

顔を見たら冗談じゃないって事くらいわかる。だからこそ信じられない。別れようだなんて、あまりに唐突すぎる。

「…本部で何かあったの?」

「別になにも…」

左手で鼻を擦るのが嘘をついてる時の癖だって気づいてないでしょ。
マフィアだったら素人にこんなの見破られたらダメじゃん。ほんとバカなんだから。

「どうせ嘘つくなら他に好きな奴がいるとか言えばいいのに」

「あぁ、そっか。あ、やべ…」

「…バカ」

あんたに嘘は向いてないと頬をつねってやると、武はそうだなっていつもみたいに軽く笑う。

駄々をこねて別れたくない、離れたくないと言えば許してくれるだろうか。せめて待っていたいと。
チラリと彼を盗み見ると苦しそうで、こんなに追い詰められた表情は初めて見た。
それでようやく私の心も決まる。我侭を言えば武は許してくれるかもしれないけど、彼の弱みになるのは絶対に嫌だ。

「指輪、返さなくていい?」

「あぁ、お前にやったやつだし」

ありがとうと告げて、今朝私が結んだネクタイをグッと引いた。縮まった距離のおかげで背伸びすれば彼の唇だ。
触れるか触れないかのところで堪えきれずに嗚咽が漏れる。

声にならない『愛してる』があなたに届きませんように。




2010執筆
20150206加筆修正
mae ato
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