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※社会人設定





ジリリリリ、とけたたましい音を立てているのは懐かしいタイプの目覚まし時計。
お互い朝が弱いから、と彼が実家から持ってきたものだ。
寝室とリビングを隔てるドアの側、つまりベッドから一番遠い場所に設置したのも同じ理由からだ。

毎朝こんな音で叩き起されては気持ちの良い目覚めな訳もなく、仕方なく起こした体は少しだけ重い。

二人分の体温に包まれていたせいで、温度差に身震いをしながらカチリ、と目覚ましのスイッチを切ると、早朝だからか急にしんと静まる。
ふあ、とあくびを一つ落として、この音でも微動だにしない大きな毛布の塊を揺すった。

「京治、時間だよ」

今度はモゾモゾと動きがあるものの起きる気配が無いのはいつもの事だ。
頭まですっぽりと被っている毛布を少しだけ捲ると、眉毛と眉毛の間が開ききってだらしの無い表情の彼がいる。その小さく開いた口からはスースーと寝息が漏れる。
普段の彼がキリッとしているからか、この対照的な顔を見る度にお腹のあたりがくすぐったくなる。

「遅刻しちゃいますよ?」

頬をツンとつつくと、あくびまじりに休みだよと返ってきた。

「え?そうなの?」

「とりあえず寒いから入って」

招き入れられたのは彼の温もりが待つ毛布の中。抱き寄せられると冷えた体がほぐれていく。

「言ってなかったっけ?」

ところでと付け加えられたその言葉には、もちろん聞いてませんけどと少し声のトーンを落として答えた。
別に本格的に怒った訳ではないけれど、こうやって返すと京治が私のご機嫌を伺ってくる。
私だって休日なのだ。本当はゆっくり寝ていられるはずだったのを叩き起された仕返しくらいは甘んじて受けてほしい。

「昼飯、どっか食いに行こうか。ほら、夢子気になる店あるって言ってただろ」

「…考えとく」

思ってた以上にむっすりした声が出て、やりすぎたかな?と京治を見上げると、ごめんと更に腕の力が強まる。
程よく逞しい体に閉じ込められるのは好きだし、いつもより男っぽい匂いがする寝起きの彼も嫌いじゃない。

二人揃っての休日も久々だし出かけるのもいいかな。
さっきの京治の言葉に甘えて、高いランチでも奢らせようなんて考えを巡らせていたら密着しているお腹らへんに違和感。

「…当たってる」

「うん、まぁ、朝だし、生理現象だから」

それはそうなんだろうけど。
お腹に当たってる部分を優しく撫でると、彼は驚いて腰を引いた。

「私とくっついてるから、とか言ってくれたれかわいいのに」

彼が言葉の意味を理解するのに少し時間が掛かったのは、寝起きだからかもしれない。

「もちろんそれもあるけど」

フッと緩められた唇と腰に回された手。
二人で出かけるのもいいけれど、こんな休日も悪くない。そう彼に触れられながら思った。
私達がその後どうなったかは察して頂けるとありがたい。



20150205
mae ato
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