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※月島高2設定



別にどうだっていいだろと、あなたに関係ありますか?と、僕のベッドに腰掛けて音楽雑誌を読む彼女を見ながら思う。
お前ら付き合って半年だろ、と先程の電話で黒尾さんに言われた。何でそんな他人の事を詳しく知っているんだ、あの人は。大学生ってそんな暇なのか。
要するに、半年も付き合っているのに、何も無いんだろうと言いたいらしい。

余計なお世話だ、本当に。それとも自分が彼女と半同棲だから自慢なのだろうか。
思わず出た大きなため息に、夢子が雑誌から顔を上げた。

「黒尾さん、なんだって?」

不安げに瞳を揺らしてこちらを見上げる。
思えば敬語が取れるまでにひと月余り、月島先輩から下の名前に切り替えるのも、2か月はかかったのではなかったか。
積極的に僕に触れてくるくせに、僕から行動を起こすと病的に照れてしまう彼女は愛しいが、よく耐えたものだと自分を褒めたい。

「黒尾さんからのイタ電。気にする事ないよ」

スカートから伸びた気持ちよさそうな足は、少し内また気味にしっかりと床に向かって着地している。

家に初めて呼んだ時も、お家の人がいないからとかですか!と目をくるくる回して真っ赤になっていたっけ。
僕が動けば、ビクッと体を揺らして警戒していたものも、今ではすっかり安心しきって、蛍くんの部屋が一番落ち着くとまで言う様になった。

「イタ電?黒尾さん暇なのかな?」

くすり、と笑う顔は付き合った当初に比べると少し大人になったようにも見える。
彼女の足元に腰掛けて、ベッドに肘をつく。そこから夢子を見上げると、えー?と首を傾げる。これは付き合ってからわかった癖だけど、質が悪い。訳すと、どうしたらいいかわからないとかそんな感じだけど、悪気なくそんな無防備に、不意をついて、首を傾げるとか。
別に黒尾さんにけしかけられたからじゃない。焦ってなんか無かったし、僕らには僕らのペースがある。ただ目の前で主張している膝小僧に無性に愛しさを感じた結果だ。ちゅ、と唇を触れさせると、ふぁ!とかひゃ!とかそんな変な声が聞こえた。

「けけけけけけ蛍くん!!!!!な、なに……!」

「さっきの黒尾さんからの電話さ」

「え?黒尾さん?」

「半年も経ってるのに、お前らまだか、だって」

言葉の意味を察する事が出来るくらいには鈍くはないようで、みるみると赤くなる彼女には止めの一言だったかもしれない。

「今日親いないから。気付いてないかもしれないけど」

その言葉を聞いて体を石の様にさせたのがわかる。

彼女の隣に腰掛けると、その重みでギシ、とスプリングの軋む音。そして今にも聞こえてきそうな彼女の心臓の音。

「あ、あの、せんぱ、けい、くん」

「焦るとその先輩っての出るよね、夢子」

ちょっと待ってとは言わせない。もうすでにどれだけ待った事か、と唇に触れる。舌を忍ばせると、ギッチリと噛み合わさった歯に当たる。
焦ってはいないけど、彼女と二人きりでいて下心の無い男なんているわけないのに。

無理やりねじ込むと、ふが、と可愛げの無い声と、初めて絡めたぎこちない舌の感触に、気が遠くなりそうなのは僕の方かもしれない。

夢子の女の子らしい肩を押すと、抵抗無く倒れるので、少しだけ驚いたと同時に先ほどの電話を思い出す。
手の平で転がされている様で面白くないので、にやけ顔の似合う先輩に感謝はしない事に決めた。



どうせなら一歩進んでみませんか


20141121
確かに恋だった様よりお題をお借りしました。

mae ato
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