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根に持つタイプなの?と赤葦くんが相変わらずの無表情で聞いてきた。根に持たせる事をしたのは彼の方なのに。私が無言でいると、ごめんと大きな手が頭の上に乗る。
本当はもう怒ってないけど、曲がったへそを真っ直ぐにするのは結構困難なのだ。

赤葦くんのお家にお邪魔するための飲み物をコンビニで買った帰り道、繋いでいた手を思いっきりふり払われた。手首がポキッと音を立てたくらいだから相当なものだろう。
驚きとショックで立ち尽くしていると、彼の肩越しには部活の先輩数人の姿が見えた。
だから納得は出来た。気恥ずかしさというか、そういうのってあるもんね、と言い聞かせた。けどダメだった。
夢子ちゃん、じゃあねーという声にも軽く会釈は出来たけど、多分笑えていなかったと思う。
期間限定で買ったアイスも、なんだかもう食べる気を無くしてしまった。はぁ。

そこから少し無言の時間が続いたと思えば、目の前には赤葦くんの顔。距離が近すぎて、背中を反らすと、ごめんとさっきよりも控えめな声。

「思いっきり手離してごめん」

でもあの人たちには見られたくなかったからと彼は言う。

「前は先輩たちの前で手つないで走って逃げたのに」

少し前に彼の部活の先輩たちに囲まれていたところを、ヤキモチをやいた赤葦くんに手を引かれて逃げた事があった。妬かれた事が嬉しくて、その時の事は鮮明に覚えているのに。
なのに、今日は手を振り払うなんて。

「私と一緒にいるのが恥ずかしいみたいで」

ショックだったという言葉は涙が零れそうになって飲み込んだ。そんな風に思ってないってわかっていても口から勝手に出てしまいそうになる。
赤葦くんが短く息を吐いた。困らせたいわけじゃないのにな。でも、だってと気持ちはどんどんと俯いていく。
プラプラと手を遊ばせると、コンビニの袋がガサ、ガサと音がしてバカみたいで腹がたつ。

「…前も言ったけど、あの人たち女の子大好きでさ」

「…え?」

「赤葦の彼女可愛いよなって相変わらずうるさいんだよね」

思わぬ方向に話がそれてついていけずにいると、一見やる気の無さそうに見える彼の目には私の姿が揺れて映っていた。

「手繋ぐと、花田さん嬉しそうな顔するから見せたくなくて」

わかってないと思うけど、と付け足された時には私は気恥ずかしさに襲われていた。

「ヤキモチ焼きなのかな、俺」

癖の強めな髪の毛をワシャッと掻いて、つまらなそうに下を向く赤葦くん。だけどそれは照れた顔を見せたくないからなんじゃないかと思う。
ガサ、とコンビニの袋が揺れたのは私が彼の手を迎えに行ったから。驚く彼にもういいでしょ?と聞くと少しだけ目を細めて微笑んだ。
せっかくだから期間限定のアイスは彼と半分こして食べよう。



人前でイチャつく趣味はありません



20141119
確かに恋だった様よりお題をお借りしました。
mae ato
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