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学園すいっち1
春先輩に寝込み(?)を襲われた翌日…
僕こと衛藤快は…見事に風邪を引きました。
学園すいっち1
「…夏風邪はバカが引くっていうけど」
まさか快が引くとはねぇ〜(笑)
横でずびずび泣いている快をからかいつつトレードマークの八重歯を見せて笑っているのは同じクラスの三好誠治。快の幼馴染みである。
本人に悪気はないのだが笑いが軽く見えてしまうのは愛嬌のある人柄のせいだろう。
そしてそんな三好を不機嫌そうに睨みつける色違いの瞳が一対。
「ちょっと!不謹慎な、笑い事じゃないでしょ?!」
大体快がバカなら三好なんてバクテリア以下なんだからね!!
朝からプリプリ怒っているのは上條璃宮。三好と同じく快のクラスメートで、入学初日に上級生達に出会い頭の告白、取り巻き(下僕?)志願を受けるというミラクルを起こした美人である。
「大体なんで風邪引いたのさ?三好じゃあるまいし、快がお腹出して寝たとか有り得ないでしょ」
Σずびっ
「Σ俺そんなキャラ?!」
璃宮の毒舌に本気で凹む三好をしり目に、マスクで顔を大きく隠した快は内心冷や汗をかいていた。何故ならば…
(お腹どころか…まっ裸だったんだよね…(泣)
そう、快が風邪を引いた理由それは…
『これでお前は俺のモノ…いい?』
………………
「いいわけなーーーい!!!」
ずびーーー!!
だってだってだって!!!ああああああんなの了承してないし!!認めてないし!!!何より全然覚えてないのにっっ!!!!いいとか言われても納得出来ませんからーーーっっ!!!!(泣)
いきなり叫びだした快に三好と璃宮だけでなくクラス中の生徒が一瞬だけ快に注目した。が、すぐに皆何事も無かったかのように日常に戻って行く。…実は快が突拍子もない行動をとるのは何時ものことで、そしてそれの大半が心の声のただ漏れ…いわゆるサトラレ現象なために、皆一様に『聞こえなかったフリ』をしてくれているのだ。
「…なんつーか…皆、快に過保護すぎんじゃねぇ…?」
呆れたように言葉を零す三好に、隣から容赦のない睨みが寄越される。
「三好うるさい。仕方ないでしょ、快、可愛いんだもん」
「だもんって…」
睨みを軽くかわして溜息をつけば、やっと落ち着いたのか、快が自分の世界から帰ってきた。すかさず後ろにズレた椅子を座りやすい位置に戻してやっている三好も、周りから見れば立派な過保護者である。
「あっ!」
今度は三好がいきなり立ち上がったかと思えば、その勢いのまま、机の横の袋を漁りだした。
補足だが、快達のクラス、1‐Aは本日一限から体育である。
「なぁ、そろそろ着替えて移動しないか?」
今日確かグラウンドだったよな?無駄に広い校舎を横断して行くには、予鈴が鳴ってから動いたのでは間に合わない。直ぐさま着替えだした三好を横目に、璃宮は今だ座ったままの快に視線を移した。
「快はどうする?見学?それとも保健室まで付き添おうか??」
辛いでしょ?と頭を撫でながら本気で心配してくれてる璃宮に、目を潤ませながら快は首をふる。
「大丈夫だよ!着替えて見学する。」
ありがとう、璃宮。
そう言って上気した頬で可愛らしく微笑まれ、璃宮だけでなく周りにいた男子たちもそれを見て頬を赤らめた。
(とにかく今は璃宮たちに心配かけないように、早く風邪を治さなきゃ!!)
快が密かに(周りから見ればそうでもない)燃えていると、快だけに見せる極上の笑みを顔にのせ、璃宮も着替えるために立ち上がる。そして一瞬にして笑顔を消すと、周りを見渡し鋭く一言。
「それじゃあ……、男共出てって」
ピシリ
今から着替えようとしている者、着替え途中の者、着替え終わって談笑している者…全てが一様に固まった。
(始まったぞ…女王様の我が儘が…(汗)
「…何、朝から血を見たいわけ?」
この一言と尋常じゃない睨みで一瞬にして教室には璃宮と快の二人だけになった。(三好は速攻で着替えて退散中(笑)
「あれ?皆は??」
「さぁ?もう着替えたんじゃないかな?」
「??そぅ…?」
決意に燃えていて周りが全く見えていなかった快は呆然、璃宮は素知らぬ顔で返事を返す。
(…皆、着替えるの速いなぁ…)
しかしもとより、余り勘繰る質ではない快は1-A男子達の嘆きには気づかず、黙々と着替えに勤しむのだった。
2へ続く
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