世界は案外優しい | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


07  



1回目に触った時と同じ様に、私の身体中から何かがこみ上げて、それは涙となって落ちていった。

「ナマエ!どっか痛いのか!?」

「どうして急に…」

麦わらの皆さんはいきなり泣き出した私を見て右往左往している。

『二度目の人生に、一片の悔いなし!!』

「…!?」

ざあ、と頭の中で流れる光景。
どこか懐かしく、泣きたくなる様な光景。

『お前は、俺と…』

「あっ…」

声が、聞こえる。
      ・
そうだ、あの人も…刀を、持っていた。
そう、そうだ…
声が、…そうこれは、男の人の声だ。

「だれ…なんですか…」

私、ずっと貴方を探しているんです。
何処に、いるんですか…

名前も知らない、顔もよく見えない、でも、ようやく「何か」が分かった。
姿がよく分からない刀を持ってる男の人、貴方は今、何処にいますか?

「私、…あなたに、あわなくちゃ…」

「ナマエ!?」

「ナマエちゃん!」

「おい…!」

瞬間、世界が揺らいだ。
麦わらの皆さんの声を背景に、私の意識は闇へと飲み込まれた。




一方、急に刀を持ちながら倒れたナマエに麦わらの一味は驚かずにはいられなかった。

「ナマエちゃん!チョッパー!!」

サンジは慌てて崩れ落ちるナマエを受け止めチョッパーを呼ぶ。

「ナマエ、いきなりどうしたんだ…」

すぐさまチョッパーが駆け寄り、容体を確認する。

「刀で何か引っかかるもんがあったんじゃねぇのか?」

ゾロは刀を回収すると、その場に座り込んだ。

「あわなくちゃって言ってたけど…もしかして、「何か」って人の事…?」

「あなたって言ってたから十中八九そうね。」

先程の言葉を冷静に推理するナミとロビン。

「ナマエ倒れたのか?」

すると魚を観察していたウソップとルフィが騒ぎに気づいた。

「ええ、なんかあわなくちゃって…。」

「人の事か…?」

「なんだ、ナマエの探しもんって食いもんじゃねぇのか。」

「うーん、分からない事が多すぎるわ、とりあえずナマエは中で寝かせましょ、話はそれからよ。」

ナミの鶴の一声でナマエはチョッパーの診察台で寝かせられ、起きるまで待つ事になった。
しかし、ナマエの言う「探し」物もとい、探し人にもうすぐ会えるという事を、この時は誰一人として分かる者はいなかった。


『ああもう、何考えてんのかわかんなくなってきた…』

ただただ、逃げたくなった。

『せんちょうを、おねがい。』

あの人を、支えてあげて。

『二度目の人生に、一片の悔いなし!!』

素早くその刀を心臓に、突き立てた。

『…世界は案外、難しいや。』


これ、は…私…?
そう、私…あの日船を降りようとして…
捕まって、持っていた刀、で…貫いて…


『っごめんなさい…!』

すべてに、謝りながら泣いた。

『…死なせない、絶対に…死なせるもんか!!』

……神様、神様?聞いていますか?
できることならもう少しだけ、この人を助ける力を下さい

『…私、ーーして来たのがーちゃんで良かった』

『貴方の傍に居たんです』

ああ、もう泣きそうだ。

『お前は、俺と生きろ』

だって、世界は案外簡単なのだから。




「っ…!」

沈んでいた意識が浮上した。
今まで見ていた映像は、全て私…なのだろう。
最後に出てきた男の人の声。
姿はまだはっきりとは分からず、ぼんやりとしている。

「さがしものは、ひと、なのかなぁ…?」

どんな、人なのだろうか?
男の人、という事までは分かったが人物像までよく分からない。
でも、あの人の声を聞いてるだけで落ち着くし、何ならもっと聞いていたい。

「あいたいなぁ…、」

あっ、でもあの人はもしかしたら私なんか覚えていないのかも知れない。
寧ろ私の事なんて知らないかもしれない。
いや待って、その可能性が高くない??
自分の事ばっかりで、相手の事なんて考えてなかった。

「もしそうだったらどうしよう…。」

泣く…色んな意味で泣く…と思う…
でも、何かしらの手がかりはあるはず…多分…

「いや、ネガティブはやめよう…じゃないと心がおれる…ポジティブにいこう…って…」

あれそう言えば、ここはどこだ?

ごごごごご!!

「えっ…!?」

知らない場所で寝ていると思ったらいきなりの地響きみたいな音とともに、船全体が回転し始めた。

「わあああああ!!」

待ってこれはやばい!!
寝起きのシリアスでこれ!?

ゴッツン!!

「いっ!」

重力に逆らえず、私は壁に強く頭を打ち付けた。
なんとも間抜けな二度目のブラックアウトである。

[ prev | next ]