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私は何も出来ない…ただただ、後ろから追うだけ  



翌日、船は予定通りに島に着いた
碇を下ろしクル―達はそれぞれの分担に分かれて島へと足を運んで行く
船長はユリちゃん、ベポ、ペンギン、シャチを連れて島の偵察と薬品の買出しに行くようだ
ぞろぞろと並んで歩くその少し後ろから私もこっそり付いていく

「いやー治安がいい島でよかったー」

どこか少しだけ重い空気の中、場を明るくしようとしたのかシャチが口を開いた

「そうだねぇ…雌の熊いないかな…」

「「いねえよ!!」」

「ベポ、流石に熊はちょっと…」

いつも通りの会話に私は嬉しい半面とても寂しくなった
ああ、会話が出来ないってとても不便でとても悲しいことだ
未練が残ってこの世に居る幽霊たちはいつもこんな気持ちで見ているのだろうか?

「あ!アイス屋さんだ!!キャプテン買ってきてもいい?」

「…後にしろ」

「アイアイ…」

その時、ベポが道の少し先にアイス屋さんを見つけた
船長に許可を取ろうとするが取れなかったようだ

「うげ、アイス屋さんだけならよかった…」

そうシャチが言った先には船長と同じ超新星のバジル・ホーキンスだった
シャチの視線に気が付いたのか、ホ―キンスもこちらに視線を向ける

「トラファルガー・ローか…」

「よぉ」

お互いが顔を合わせると、周りの温度が2℃くらい下がったような気がした
一触即発の空気に、誰もが生唾を飲み込む
その空気を破ったのはホ―キンスだった

「…やめておこう、今日俺が死ぬとは出ていない」

「…その方がお互い良さそうだな」

その言葉と共に周りの空気が和らいだ

「…それにしてもトラファルガー、お前は女を乗せる主義だったのか」

「あ?ああ…こっちも色々あんだよ」

「そうか…ん?」

ホ―キンスは納得したのかしてないのか、それだけ答えるとこちらに視線をよこす
私は少しだけ驚いたが、それも一瞬と思い気にも留めなかった
しかしホ―キンスの視線は私からずれない

「お前の船は幽霊までも乗せているのか…変わってるな」

「!?」

その言葉に、その場に居たハートの海賊団は驚きを露わにした

「てめぇ…今なんつった?」

「…何をそんなにむきになっているのかは知らないが、お前の船には霊も居る…

「見えるのか!?見えるんだな!!」

船長はホ―キンスの言葉を聞くと鬼のような形相で服に掴みかかった
いきなりの事にホ―キンスとそのクル―達も驚くが、それも一瞬で船長を離そうと動き出す

「何をそんなに焦っている、トラファルガー」

「うるせぇ!!声は!?そいつの声は聞こえるのか!?」

冷静さを失っている船長に対してホ―キンスは冷静に言葉を返していく

「キャプテン!落ち着いてください!!」

「ローさん!!」

シャチやペンギン達がホ―キンスから船長を引きはがそうと間に入り込む

「黙れ!!おい!声は聞こえるのかって聞いてんだ!?どうなんだ!?」

船長の剣幕にそれぞれの船のクル―達は怖じ気づき、手が出せなくなっていた
ホ―キンスはやれやれといった様子で、視線を船長から私にかえたばちり、と視線が合う
ホ―キンスはどうにかしろとでも言うように私をじっと見つめてくる
私は本当に声が聞こえるのかと疑問に思ったがもし本当だったら大変なことになりかねないと思い、じっと見つめて来るホ―キンスに向かって一言だけ言った

「船長には、何も言わないで下さい…お願いします」

「…!」

ホ―キンスは私の言葉を聞くと少しだけ驚いた顔をした
その顔に私の声が聞こえたんだと確信する

「おいっ!何か言ってるのか!?」

先程から胸倉を掴んだまま離さない船長にホ―キンスは一言だけ述べた

「何も、言うなと」

「どういう…」

「船長!!海軍が来ています!!」

驚いた船長の言葉を遮ったのはホ―キンスのクル―の声だった
その一声でその場は混乱し始める

「っち、海軍か!シャチ、ベポ、ユリ、急いで船に戻るぞ!」

ペンギンはいち早く状況を飲み込むと急いで逃げる準備をしていた

「おいっ!それはどういう意味なんだ!」

「船長!海軍が来てます!急いで逃げないと…!」

「そんなのどうでもいい!」

「だめです!数が多すぎます!」

何とかしてホ―キンスと船長を引きはがし、船へと急ごうとするが船長はまだ諦めていないらしい
ホ―キンスは、既に反対方向へと逃げていた

「海賊共を逃がすなー!!!」

「キャプテンッ!!」

「くそっ…!!」

すぐそこまで海軍が追って来ているというのに、船長は悔しそうに顔を歪めながらホ―キンスが逃げて行った方を睨んでいた

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