ゴボゴボゴボ、と言う音が耳元で聞こえる
能力者である船長は海で泳げないため、そのまま下へ下へと沈んで行く
馬鹿なことしたなぁとかなんで船長に掴めたんだろう?とか色んな疑問が飛び交う中、私はゆっくりとその閉じていた目を開いた
「…!」
開いた瞬間、私は目を見開く
「ナマエ…」
ごぼり、と船長の口から気泡が溢れるが口の形ははっきりと私の名前をかたどっていた
やっと合わさった視線、久しぶりに触れる船長の体温、あり得ないと思いつつ、私は嬉しさのあまり笑いながら泣いていた
「せんちょう…」
「…!」
呟く声もすべてが聞こえて見えているみたいだ
こんなこと、絶対にあり得ない…あり得ないんだけど…、
…ああ神様、これが夢でもいいや、また、船長に会えた
私と船長の体とは裏腹に、ごぼり、ごぼりと気泡は上へ上へと目指していく
真っ青な海の中、私と船長は絶対にあり得ない光景を見ている
私は泣き笑いのまま、船長の額に自分の額を合わせた
ずっと今まで、これは恋じゃないと言い聞かせていた
…私は転生トリッパーだし、キャラとして好きなだけだと、これは夢だと思っていた
でも…でもさ、この世界にトリップした時点でだめだったんだよ
トラファルガー・ローがあんな風に怒鳴るなんて知らなかったし、あんな風に笑うなんて、知らなかったんだよ
…もう認めちゃえ、認めちゃえよ…そう…そうだよ…死んでもなお好きすぎて幽霊になって化けて出てきちゃうくらい好きなんだよ…!
……やっと、言える…
「っ……せんちょう…私も、好きです…!」
「っ…ああ」
ぎゅっ、と力強く握った手を握り返してくれる船長に私はどうしようもなく涙が溢れて止まらなかった
「せんちょう、せんちょう……ローさんっ…!」
「っ!」
もう、もう我慢しなくてもいいよね…?
あの世界に居た時からずっと、貴方の名前を呼びたかった、
それくらい、私は貴方が好きです
…しかし、そんな時間はすぐに終わってしまう
だんだんと力が抜けていくローさんの手に、私は今までにない位焦り出した
「…ナマエ、お前は…俺と共に、…」
「ローさんっ!!」
完全に閉じ切ってしまった目に、私は恐怖で押しつぶされる
「…死なせない、絶対に…死なせるもんか!!」
……神様、神様?
聞いていますか?
できることならもう少しだけ、この人を助ける力を下さい