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07



「…つまり、病気で死んだら湖の中でしかも透明な壁の中に閉じ込められてて出られず、歌を歌ったらかけられていたはずの手錠が外れていた、と…。」

「…はい…。」

私が冗談を言っていないと分かったのか、男の人は先ほどのだるそうな顔とは変わり真面目な顔をしてあれこれ質問をしてきた。

「ふぅん…歌、ね…。」

何か考え込むような仕草をする男の人に、私は何か変なことを言ってしまったのかと不安に包まれた。

「…ナマエちゃん、もしかして渦巻きみたいな模様があった果物とか食べた?」

「た、食べました…。」

「形は?色は?味はどうだった?」

「か、形は丸くて、えと、色は薄いピンク色で、味は…すっごくまずかったです…。」

「…あぁ…だよねぇ…。」

と言いながら男の人は頭を抱えてしまった。
な、何かまずいことでも言っただろうか…。

「ナマエちゃん、よく聞いて、それは『悪魔の実』って言って、すごくまずいのが特徴なの。
 食べたら海に嫌われてカナヅチになるんだよ。」

「え…」

あ、悪魔の実!?

「あーやっぱりかぁ…どうしようかな…。」

「で、でも泳げなくなるだけですよね…?」

「うーん、確かに泳げなくなるだけなんだけど、その代わりに圧倒的な力を手に入れることが出来るんだよ。」

「力…?」

力持ちになるとか足が速くなるとか…?

「そう、猫になったり鳥になったり、煙とか砂、マグマとか毒にもなれるよ。」

「!?」

え、お、驚きすぎて声も出ません!!

「じゃ、じゃあ私もマグマとか毒とかになるんでしょうか!?」

必死になって目の前の男の人の服を勢いよく掴んだ。

「少なくともマグマと毒はもうすでに他の人の能力だからならないよ安心して。」

「よ、よかった…。」

「『悪魔の実』を食べた人を能力者つって、この能力者は三種類に分けられる。
 一つは超人(パラミシア)系、もう一つは動物(ゾオン)系、最後は自然(ロギア)系という感じに。」

「そ、そんなに種類があるんですか…。」

とても恐ろしいものを食べてしまった…。
これからどうしよう…。
あ、でも能力者ってことを言わなければ普通の人間なんだよ、ね…?

「でも誰にも言わなければ大丈夫ですよね…!」

「うーん…大丈夫っちゃあ大丈夫なんだけど、俺がもう知ってるし…。」

「あ、そうか…。」

「それに俺仮にも大将だし、能力者ならなおさら上に報告しないといけないんだよね。」

「大将…?」

男の人の言葉に頭の上では?が浮かぶ。

「あれ?言ってなかったけ?ここは海軍本部で俺はそこの大将だよ。」

「海軍本部…?え、天国にはそんなものもあるんですか…?」

「ナマエちゃんが言う天国かは分からないけれど、少なくとも俺にはここが天国とは思えないなぁ…。」

「え、じゃあなんで私、死んでるんじゃあ…。」

「でもナマエちゃん俺の服掴んでるし、ちゃんと触れる。」

男の人は服を掴んでいた私の手を取りぎゅっ、と握った。

「あ、ほんとだ…。」

「ね?だから死んではいないと思うんだけどなぁ…。」

そう言って男の人はもう片方の手を伸ばして私の頭を撫でる。
     ・・
「じゃあ、ここはどこですか…?」

「…今この時代は大海賊時代と呼ばれていて、海賊王だったゴールド・D・ロジャーが隠したワンピースっていう宝を手に入れようと海賊たちが競い、争っている。
そんな海賊たちを捕まえるのがこの海軍本部と呼ばれる世界政府直属の海上治安維持組織だよ。」

ゆっくりと子供に聞かせるように話す男の人。
まるでファンタジーだ。
漫画や小説、映画の中に入ったみたい。
実感がわかず、頭がぼうっとするが一つだけ分かったことがある。

「いき、てる…、」

触れるし姿も見えている。
私はまだ、死んではいない。

「よ、よかったぁ…」

生きてると分かっただけで安心したのかぼろぼろと涙を零しながら泣いてしまった。

「あららら…」

そんな私を見ながら男の人は頭を撫で続けてくれる。
大きい手だなぁ…と思いながらその手の大きさに、ぬくもりに、安心していた。
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