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09



空から落ちてきた天使は、異海の人だった。


「(まさか、ねぇ…。)」

そんなおとぎ話みたいなことありえないと考えながら俺は目の前の扉を開けた。

「おおクザンか、どうした?」

扉を開けて一番最初に目に入るのはここの最高権力者であるセンゴクさんだ。

「、センゴクさん」

そういえば異海の人は確か稀に不思議な力を持っている、と資料にも書いてあったっけ。

「なんだ休みはやらんぞ。」

「あー…違いますよ、…異海の人を保護しました。」

「なっ…」

センゴクさんは驚きのあまり立ち上がって難しい顔をさらに顰めさせた。

「保護した時は気を失っていたみたいで…今は医務室で寝てます。」

「…それで?」

「名前はミョウジナマエ、…能力者です。」

「…はぁ…能力は…?」

もう分かっていたかのように座りなおすと顔の前で手を組み、頭を預けながら溜息をついた。

「あー…薄々分かってはいますが確証がないのでこれから調べてきます。」

「予測は?」

「…トリトリの実、モデルセイレーンですかねぇ…。」

「っ何!まさか…」

「空から落ちて来たんですよ、まるで天使みたいに。」

「…は?」

センゴクさんの顔が何を言っているんだこいつは、と言っている。
でも本当に落ちて来た時は天使かと思うほどに、綺麗だった。

「まあ、連れて来たの俺なんで面倒は俺がみますね。」

「う、うむ…だが…、」

少しだけ渋るセンゴクさん。
きっと色々考えているのだろう。
だが俺も一応は大将という名をもらっている身。
そうそうやられる気もない。

「大丈夫ですよ、そんなに心配しなくてもどこからどうみても可愛い女の子でしたから。」

「そいうい問題じゃない!!
はぁぁ…分かっているのか分かっていないのか…。
…そうだな…お前がそこまで言うのならこの件、任せるとしよう。」

「はーい…じゃ、能力のこと調べてきます。」

「ああ、」

そう言って俺は部屋を後にした。


「あー…やっぱりね…。」

資料室に着いた俺は図鑑を手に取りぱらぱらとページを捲る。
薄々は気づいていたが、やはり予想通りだった。

「モデルセイレーン、ねェ…。」

トリトリの実、モデルセイレーン。
その名の通り幻獣種であり、とても珍しい実だ。
故に情報がとても少なく、この図鑑でさえ少しの情報しか載っていない。

「歌を聞いた者はその歌の虜になる、か…。」

七武海であるボア・ハンコックのメロメロの実と少し似ている部分がある。
まあハンコックの場合、意味が少しだけ違うが…。

「あーなんて説明すっかなぁ…。」

貴重な実を食べた人間は海軍に保護されるか海賊になっている場合殺されるかの二択しかない。
極端に言うと生きるか死ぬか、だ。
きっとあの子は逃げるという選択肢とかはないはずだろう。
だが万が一、という可能性もある。
その時は…、

「いやぁ…あんないい子、殺したくねェなぁ……。」

ぼりぼり、と頭の後ろを掻きながら俺は図鑑を元の場所に戻し図書館を後にした。
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