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泣きボクロイケメン



隠岐の口調分からなすぎて泣いちゃう…間違えてたらコメントください……


***


ドライブ。筋トレ。ショッピング。ボーダー隊員の休日は人それぞれだが、私の場合は自分の部屋でゴロゴロすることである。とくに、おふとんの中でぬくぬくしながらの微睡みは至福のひととき。誰にも邪魔されたくない時間である。

そんな大好きな時間を満喫していると、ドンドンとドアを叩く音がした。
誰だよ。今日は休日なんだよ。用があるなら連絡くらいいれろや。
と心の中で悪態をつきつつも、訪ねてくる人が誰なのか分かっている。いつも私の休日をどこからか聞きつけ、やってくる男がいるのだ。


「なまえおるやろ?」


来た。厄介なのが来た。
コイツ、隠岐孝二はボーダー屈指のイケメンである。本人はモテないと言っているが、そりゃ嘘だ。コイツの顔面に惚れてる女の子が何人もいることを私は知っている。あまり信憑性はないが、彼女いる疑惑があるがゆえに、告白されていないだけである。
さて、そんな男が女の子の部屋を訪ねて来ているのである。言っておくがここはボーダーの寮であり、スカウト組などのボーダー隊員が住んでいるところだ。もし誰かに見られてみろ。あっという間に「隠岐先輩の彼女ってなまえ先輩らしいよ!」なーんて噂が広まるに決まってる。

はっきり言って嫌だ。隠岐が嫌いなわけじゃないけど、それとこれとは別。まだ好きな人すらいないけど、将来お付き合いするかもしれない人との出会いが遠のいてしまうかもしれないのだ。そうしたら、もしかしたら一生、ひとりで過ごすことになってしまうかもしれない。そんなの嫌だ!

でも、それを隠岐に言ったところで「じゃあ、俺が嫁に貰うわ」なんてさらっと返されてしまうのだ。そういう問題じゃないわ。まったく、これだからイケメンは。ちょっとときめいちゃうじゃない。


「はよ開けてや〜」
「はいはい、今行きますよーっと」


重い腰をあげ、ドアを開ければ、憎たらしいほどに整った顔の男。目元の泣きボクロが色気を放ち、高校生とは思えない妖艶さを生み出している。起きたてでボサボサ頭の私の姿がおかしかったのかフッと軽く笑った。


「おはよ」
「まだ寝てたんかい」
「いつものことじゃん」


「おじゃましまーす」と言いつつも、堂々と慣れた調子で部屋に入っていく隠岐。無言で後をついていく私の様子がいつもと違うのに気がついたのか、振り返って伏せ目がちな私の顔を覗き込んできた。


「なんか怒ってるん?」
「……私が一番好きなことって、なんだか知ってる?」
「ゴメンて。これ買ってきたから許してや」
「またそういう……あ、これこの間食べて美味しかったところのやつじゃん!」


こうして食べ物を持ってきてくれるから、私の機嫌は急上昇してしまうのである。我ながら単純であると認めざるを得ない。


「食べよ!」


キッチンから小皿とフォークを運んできて、ケーキを箱から崩れないように移す。赤い果実が美味しそうなショートケーキに凝った飾りのチョコレートケーキ、いろいろ種類がある中で私が選んだのはチーズタルト。逸る気持ちを抑えて、いただきます、と手を合わせて頬張れば、サクサクとした食感と口に広がる濃厚さ。美味しすぎる…!ともぐもぐとひたすら味わうことに専念していれば、静かだった隠岐が話し始めた。


「ほんま美味しそうに食べるんな」
「だっておいしんだもん〜」
「これがその積み重ね…」
「ちょっと!お肉つままないでよ」
「はー…なんでこんな柔らかいん? こんなん病みつきになるわ」
「、は!? 揉むな変態!はーなーせ!」
「嫌や、離さへん」


最初は摘むだけだったのに、だんだん大胆に揉み始める手。二の腕の余分な肉を揉まれて大人しくしているわけにはいかない。腕を掴んで離そうとするが、そこは男と女。面白いくらいにビクともしないのである。

隠岐に止める気は見られないし、止めさせることも出来ない。それに向こうが太る原因を持ってきたわけだし、私は続きが早く食べたい。隠岐は迅と違って変なところは触ってこないという信用もある。結果抵抗するのも早々に諦め、隠岐の好きなようにさせてしまう。

しばらくすると気が済んだのか「じゃあもう俺帰るわ」と言って、ペロッと最後の一口を口に入れて帰ってしまった。


休日に突然訪ねてきたと思ったら、私を甘いお菓子で餌付し、そして二の腕のお肉を揉んで帰っていく。これがいつものルーティーン。結局いつも隠岐が何がしたいのか、モテる男のすることはイマイチ分からない。


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